最高裁判所第二小法廷 昭和32年(オ)331号 判決 1961年4月28日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人和智昂の上告理由第一点について。
所論「甲第一号証」とあるは甲第一号証の一、二を指すものであり、「乙第一号証」とあるは乙第一号証の一ないし一七を指すものであることは記録上明白であり、又原判決の事実摘示の項に乙第一号証とあるは乙第二号証の誤記であること記録上明白である。論旨は理由がない。
同第二点について。
原判決の引用する第一審判決が、本件売買契約の受渡方法について、乙第一号証の一ないし一七の記載に拘らず原判示のごとく認定したのは、その挙示する証拠上首肯し得るところであつて、この点につき所論のような違法ありとすることはできない。
同第三点について。
原審が本件売買価格と履行期における大連又は営口における市価との差額をもつて、上告人の債務不履行によつて被上告人の通常蒙るべき損害と判断したことは正当であつて、右損害をもつて特別事情によつて生じた損害であるとする論旨は採用できない。なお、上告人は被上告人が本件買受品を第三者に転売契約をしていたことを主張するけれども、上告人は原審においてその転売代金の額について立証するところがないのであるから、右転売の事実にもとづく損害額の算定に関する所論も採用することはできない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)