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最高裁判所第二小法廷 昭和33年(あ)1514号 判決 1958年11月07日

主文

原判決中「当審の未決勾留日数中六十日を原判決の刑に算入する」との部分を破棄する。

原審における未決勾留日数中二八日を本刑に算入する。

その余の部分に対する本件上告を棄却する。

理由

福岡高等検察庁検事長草鹿浅之介の上告趣意は末尾添付の別紙記載のとおりである。

職権により調査するに、記録によれば、被告人は本件につき起訴前である昭和三二年一二月五日勾留状の執行を受け、爾来第一審並びに原審を通じて勾留を継続されているものであるが、これよりさき、被告人は昭和二八年六月二三日福岡地方裁判所において窃盗罪により懲役五年(未決勾留二一六日算入)に処せられ、同判決は同年一〇月三一日確定し即日右刑の執行を受け、その後昭和三二年一一月二五日仮出獄を許されたが、右刑の刑期満了予定日であった同三三年三月二八日までの期間中に右仮出獄を取消されたため、更に本件被告事件について勾留中の同年同月二六日から右仮出獄取消による残刑の執行を受けることとなり、その刑期は同年七月二七日に満了すべき筋合であったところ、被告人は本件第一審の判決に対し同年二月二六日控訴を申立て、原審はこれに対し同年六月三〇日控訴を棄却するとともに原審における未決勾留日数中六〇日を第一審判決の本刑に算入する旨の判決を言渡したものであることが明認できるのである。

してみれば、原判決が第一審判決の本刑に算入した原審における未決勾留日数中、前記控訴申立の日より別件につき仮出獄の取消による残刑の執行を受けるに至った日までの二八日間を除くその余の期間は前示確定刑の執行と重複執行されていたことが明らかであり、右のように刑の執行と重複する未決勾留日数を本刑に算入することは不当に被告人に利益を与えることとなり違法であるといわねばならない。(昭和二九年(あ)第三八九号同三二年一二月二五日大法廷判決、集一一巻一四号三三七七頁参照)それ故、原判決中前記未決勾留日数を算入した部分は結局刑法二一条の適用を誤った違法があり刑訴四一一条一号により破棄を免がれない。

よって同四一三条但書により原判決中「当審の未決勾留日数中六十日を原判決の刑に算入する」との部分を破棄し、刑法二一条に則り原審における未決勾留日数中二八日を本刑に算入することとし、その余の部分に対する上告は上告趣意として何らの主張がなく従ってその理由がないことに帰するから、刑訴四一四条、三九六条により主文三項のとおり上告を棄却すべきものとし主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

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