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最高裁判所第二小法廷 昭和33年(あ)521号 判決 1958年10月17日

主文

本件各上告を棄却する。

理由

被告人ジェームス・エル・ボイドの弁護人岡本治太郎の上告趣意について。

第一点は、憲法三一条違反の語を用うるけれども、その実質は、所論各供述書が被告人らに宣誓を為さしめた上作成されたものであるからその供述に任意性を欠き、証拠とすることができないとする単なる訴訟法違反を理由とする主張に帰着し刑訴四〇五条の定める適法な上告理由に当らない。のみならず所論供述書はアメリカ合衆国の軍法会議に関する統一法に基いて作成されたものと認められるところ、同統一法によれば被疑者は当該被疑事実につきその意に反して供述をなす必要なく、且つ当該供述について宣誓をなすと否とは全く自由であり、本件の場合被告人らはその供述前以上の趣旨の告知を受けながら、任意に供述の上その供述書に宣誓及び署名をしたものである事実は、原判決の適法に認定するところである。されば所論供述書は事実上も法律上も何ら任意性に欠くるところはないものといわなければならない。それ故この点に関する原判示は正当であり、所論刑訴三一九条、三二二条違反の論旨は理由がない。

第二点は、事実誤認の主張をいでず、刑訴四〇五条の適法な上告理由に当らない。

被告人ビリー・ジェー・ディックソンの弁護人土川修三の上告趣意について。

第一点は、証人土屋キヌの証言は採証すべからざる証言であるとの、証拠法則違反を主張するけれども、その実質は結局は原審の是認した第一審判決の専権に属する証拠の価値判断を争い、それを前提とした事実誤認の主張に帰着し、第二点は量刑を非難するものであって、何れも刑訴四〇五条の適法な上告理由に当らない。

なお記録を精査するも、本件につき刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

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