最高裁判所第二小法廷 昭和33年(オ)224号 判決 1961年5月26日
宇都宮市西原町一一七四九番地
上告人
鈴木龝男
右訴訟代理人弁護士
菊地三四郎
東京都千代田区代官町一一番地
被上告人
関東信越国税局長
牧野誠一
右当事者間の所得税不当課税更正処分の取消並に変更請求事件について、東京高等裁判所が昭和三二年一二月一六日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告申立があつた。よつて当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人菊地三四郎の上告理由第一点について。
論旨は要するに、上告人の当初の審査請求は更正所得金額に対する不服をも包含する旨を主張するのである。
しかし、原判決が引用する一審判決は、乙一号証及び上告人本人尋問の結果の一部に基き、上告人は加算税及び追徴税についてのみ審査請求を求めたのであつて、所得額並に所得税額を争い、その審査請求をしたものではない旨を認定しており、そして、右認定は、右挙示の証拠によつて首肯することができる。審査決定書に所得額及び所得税額の記載があつたからといつて、右認定が誤りであるということはできない。論旨援用の判決は本件と場合を異たし、本件の先例になるものではない。論旨は理由がない。
同第二点について。
論旨は、本訴係属中の昭和二七年一〇月九日、所得額、所得税額、加算税、追徴税についてあらためて決定があつたのであるから、右の全部について訴は係属すべき旨を主張するのであるが、原判決は、この点について、右はさきに通知した加算税額に計数上の誤謬があることを発見し訂正したに過ぎず新に所得額等を決定したものではない旨を判示しており、かかる通知があつたからといつて、原判決の結論に影響を及ぼすものでないことは明白であつて論旨は理由がない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助)