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最高裁判所第二小法廷 昭和33年(オ)62号 判決 1958年5月09日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

補助参加人等の参加によつて生じた費用は参加人の負担とする。

理由

上告指定代理人石川六郎、同阿部義次、同高城勤治、同今井実の上告理由は別紙のとおりである。

上告理由第一点について。

原判決が、本件選挙の第一投票所における公職選挙法一七五条の二による候補者の氏名、党派別の掲示場所が右投票所内でなかつた旨を認定したのに対し、論旨は、右掲示場所は投票所内である旨を主張し、原判決は右一七五条の二第一項の解釈を誤つた違法がある旨を主張するのである。

しかし、原判決の認定するところによれば、右第一投票所の設けられた川部公民館は約三十一坪の建物で、内部は玄関に続く廊下を隔てて集会場と会議所兼事務室の二室に分かれており、本件選挙に際しては、右集会場内に投票に関する設備が設けられ、そのなかで、投票に関する手続が行われ、右会議所兼事務室では投票手続に関する何等の事務も処理されず、玄関から集会場に至るまでの廊下は右集会場への通路として使用されたに止り、そして、本件氏名等の掲示は、右廊下と集会場との境をなす玄関正面のガラス窓に、廊下に面して貼付せられ、集会場の内部からは右掲示を見ることができない状況にあつたというのである。

おもうに、公職選挙法が特に一七五条の二を設け投票所内の投票の記載をする場所その他適当な箇所に候補者の氏名党派別を掲示せしめることにしたのは、原判決も説明するように、選挙人が投票用紙に候補者氏名を記載するに際し、候補者の氏名、所属政党等を再確認する機会を与えるためと解されるのであつて、このような規定の趣旨にかんがみれば、前述原判決の認定した本件掲示場所のごとき、到底これを、右一七五条の二にいう投票所内と解することはできない。論旨は理由がないといわなければならない。

同第二点について。

論旨は、原判決はその理由に齟齬があるというのであるが、原判決理由の前段と後段との間に所論のような論理の飛躍はなく理由の齟齬はない。論旨は理由がない。

同第三点について。

論旨は、原判決が、若干時間、右掲示の候補者坂本太平治の氏名に振仮名が附されていなかつた事実をもつて本件選挙の結果に異動を及ぼす虞がある旨を判示したのを非難するのである。

しかし、前述のように、本件掲示はその場所において選挙の規定に違反しており、そして第一投票所における投票人数及び本件選挙の各候補者の得票数について原判決の確定するところによれば、かかる掲示場所に関する規定違反は本件選挙の結果に異動を及ぼす虞あるものと解すべく、しからば本件選挙はそれだけで無効とすべく、所論の点について原判示の当否を判断するまでもなく原判決は正当であつて、論旨は結局理由がないことに帰する。

補助参加人等訴訟代理人弁護士関山忠光の参加の理由第二は別紙記載のとおりであるが、右論旨に対する当裁判所の判断は、前記上告人の上告理由に対する判断と同じである。

以上説明のとおり本件上告は理由がないからこれを棄却することとし、民訴四〇一条、九五条、八九条、九四条後段によつて、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

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