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最高裁判所第二小法廷 昭和34年(あ)1075号 判決 1962年6月15日

主文

本件各上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人小林彦一、同池田新七の平分負担とする。

理由

被告人小林彦一、同池田新七各本人の上告趣意は、いずれも量刑不当の主張であって、適法な上告理由に当らない。

右被告人両名の弁護人高木右門の上告趣意第一点について。

所論は、判例違反をいうところがあるが、所論引用の判例は事案を異にする本件には適切でないから、その前提を欠き不適法であり、その余は単なる訴訟法違反の主張であって、適法な上告理由に当らない。

のみならず、訴訟法違反をいう所論は、被告人両名につき刑訴四〇二条違反を主張するものであるところ、記録を調査するに、第一次控訴審判決による差戻前の第一次第一審判決は、被告人小林を懲役一年及び罰金五〇、〇〇〇円に、同池田を懲役一年及び罰金三〇、〇〇〇円に処しているのに対し、右差戻後の第二次第一審判決は、被告人両名をいずれも懲役一年六月及び罰金三〇、〇〇〇円に処しているものであり、後者は、被告人池田については勿論、同小林についても、前者より重い刑を言い渡したものであることは所論のとおりであるけれども、右第一次第一審判決に対しては、被告人両名の側からのみならず、検察官からも量刑不当を理由とした控訴申立がなされているのであって、かかる検察官の控訴申立があった以上、本件におけるが如く控訴審が右申立に対する判断をしないで職権により第一審判決を破棄、差し戻した場合であっても、刑訴四〇二条の適用はないものと解するのが相当である。右第二次第一審判決を支持した原判決に、所論のような不利益変更禁止違反の違法は存しないものというべきである。

同第二点について。

所論は、単なる法令違反の主張であって、適法な上告理由に当らない。

のみならず、所論被告人小林の覚せい剤製造の所為(第一審判決判示第一の一の事実)と同譲渡の所為(同判示第一の二の事実)とを併合罪の関係にあるものとした原判示は相当であって、所論の違法は認められない。

被告人田中粂蔵の弁護人藤井哲三の上告趣意は、違憲をいうけれども、同被告人にかかる所論犯罪事実が捜査機関の囮によって誘発せられたものであることは証拠上認定できないとする原判示は、記録により肯認するに足りるから、論旨はその前提を欠き上告適法の理由とならない。

また各被告人につき記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四一四条、三九六条のほか、被告人小林彦一、同池田新七につき同一八一条一項本文により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助)

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