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最高裁判所第二小法廷 昭和34年(あ)755号 決定 1962年2月21日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人菖蒲逸良の上告趣意第一点は、判例違反をいうが、その実質は事実誤認、訴訟法違反の主張を出でないものであり、同第二点引用の判例は、弁護士が強制競売の目的たる不動産を競落した場合に関する判例で、弁護士たる被告人が不動産競売事件係属中に抵当権附債権の譲渡を受けた本件とは事案を異にし適切でなく、いずれも刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

弁護人大竹武七郎の上告趣意第一は、判例違反をいうが、その実質は単なる訴訟法違反の主張であり、同第二、第四、第五は、いずれも事実誤認、訴訟法違反の主張を出でないものであり、同第三は、判例違反をいうが、引用の判例は本件に適切でなく、論旨中その余の部分は、単なる法令違反の主張であって、以上いずれも刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

弁護人小泉英一の上告趣意第一点は、違憲をいうが、その実質は訴訟法違反の主張に帰し、同第二点は、判例違反、憲法違反をいうが、引用の判例は本件に適切でなく、違憲をいう点も、その実質は単なる法令違反の主張を出でないものであり、同第三ないし第七及び第九点は、違憲をいうが、その実質はいずれも事実誤認、訴訟法違反の主張を出でないものであり、同第八点は、違憲をいうが、その実質は事実誤認及びこれを前提とする法令違反の主張に帰し、以上いずれも刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

(なお、弁護人大竹武七郎の上告趣意第三、弁護人小泉英一の上告趣意第二点中弁護士法二八条の解釈適用の誤りをいう点につき考えるに、原判決の確定した事実によれば、被告人は弁護士なるところ、債権者住田栄の申立にかかる不動産競売事件が原判示裁判所に係属中、抵当不動産所有者金子チヱから競売期日延期の交渉依頼を受けたのを奇貨として、自己の利益を図り、右債権者から原判示のように抵当権附債権の譲渡を受けたというのである。しかし競売手続実行中の抵当権附債権は同条にいわゆる係争権利に当るものと解するを相当とするから、被告人の右所為が同条違反の罪を構成するとした原審の判断は正当である)。

右のほか、記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

弁護人菖蒲逸良は、判例提出書、上申書と題する各上告趣意書を提出したが、右は何れも期間経過後のものであるから、これらに対しては判断をしない。

よって同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助)

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