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最高裁判所第二小法廷 昭和34年(オ)183号 判決 1962年7月06日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由第一点および第二点について。

所有権移転請求権保全の仮登記は、所有権を取得した場合になさるべき本登記の順位を保全することを目的としてなされるものであつて、仮登記の原因たる権利関係自体の公示にその目的があるのではないから、仮登記された権利関係と実質上の権利関係との間に若干の喰い違いがあつても、当該仮登記が特定の不動産の所有権移転請求権を保全するための仮登記として同一性を害するものと認められない限り直ちにこれを無効とすべきではないと解すべきところ、原判決は本件仮登記においては、その原因たる権利関係を条件附代物弁済契約とすべきところ、原判示の如き事情により仮登記申請書に売買予約による所有権移転請求権の保全と記載したためその旨の仮登記の記載がなされたものであるが、後日停止条件が成就し仮登記の目的たる不動産所有権が仮登記権利者に移転したときは、仮登記権利者は仮登記義務者に対し、これが更正登記を求めるとともに、あるいは、更正登記を求める請求を併合しないで仮登記に基いて本登記を請求し得るものと解すべきであるとして、前記原因たる権利関係の記載の相違は本件仮登記の効力を害するものではないと判断していること判文上明らかであつて、右判断は前段説明の趣旨に照し是認し得るところである。よつて、原判決に所論の法令解釈の誤り、理由不備または理由齟齬の違法がなく、また引用の判例は本件に適切でない。論旨はすべて採用できない。

同第三点および第四点について。

破産者行徳峯次郎と被控訴人間に本件土地家屋に関する停止条件附代物弁済契約が締結されたことおよび被控訴人がその停止条件の成就により判示日時に右物件の所有権を取得したとの原判決(原判決の引用する一審判決)認定事実は、所掲の証拠により肯認できるから、原判決に所論の経験法則違反、採証法則違反、審理不尽、理由不備、理由齟齬の違法はない。

所論引用の判例は本件に適切でない。論旨はすべて採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助)

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