最高裁判所第二小法廷 昭和34年(オ)530号 判決 1962年2月23日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
理由
上告代理人杉山賢三の上告理由第一点について。
原審が確定した事実によると、本件家屋(木造亜鉛葺二階建一棟建坪一八坪五合、二階一一坪二合五勺。ただし、実測延四一坪)は、賃借人たる上告人青木静江において、自ら居住するだけでなく、その下宿業の用に供する目的をもつて、昭和二九年一二月一八日賃借し、二階一〇畳、八畳、六畳等に下宿人(賃借当時六人)を賄付で継続的に宿泊させ、階下食堂六畳の室も下宿人に使用させていたもので、その事業に供する部分の床面積が合計一〇坪を越えるものであるというのであるから、上告人が本件家屋でなしていた右下宿業を、地代家賃統制令二三条二項七号にいわゆる旅館に類するものとして、同令による統制の適用の範囲外にあるものとした原審の判断は相当である。所論は、独自の見解を前提として、原判決の判断を非難したり、原審の訴訟手続上の措置を攻撃するものであつて(訴訟が裁判に熟するか否か、および一たん閉じた弁論の再開を命ずるか否かは、いずれも裁判所の裁量によつて決せられるべきことである。)、すべて採用しがたい。
同第二点について、
所論原審の認定事実は、原判決挙示の証拠により肯認しうる。論旨は、原判示にそわない事実を前提として、原審が適法にした証拠の取捨判断、事実認定ないし訴訟手続上の措置を非難するにすぎず、採用しえない。
同第三点について。
控訴審で請求が減縮された場合、その減縮部分については初めより訴訟係属がなかつたものとみなされ、この部分に対する第一審判決は、おのずからその効力を失い、控訴は残余の部分に対するものとなるから、この部分につき第一審判決を変更する理由がないときは、控訴棄却の判決をなすべきものであることは当裁判所の判例とするところである(昭和二四年一一月八日第三小法廷判決、民集三巻四九五頁、昭和三一年一二月二八日第二小法廷判決、民集一〇巻一六四一頁)。されば、原審が控訴棄却の判決をしたことは正当であり、論旨は理由がない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助)