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最高裁判所第二小法廷 昭和36年(オ)522号 判決 1962年7月20日

上告人 国

国代理人 武藤英一 外一名

被上告人 亀崎武次 外三三八名

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人武藤英一、同武田誠吾の上告理由について。

論旨は、要するに、駐留軍労務者給与規程の休業手当に関する条項は、軍の都合による休業の場合には、それが民法五三六条二項にいう「債権者ノ責ニ帰スヘキ事由」によると否とにかかわらず、一律に平均賃金の六割に相当する手当を支給する旨を規定したものであると主張し、そのことを前提として、原判決には同条項の解釈適用を誤つた違法があるというのである。

しかし、駐留軍労務者は、政府に雇用されて日本に駐留するアメリカ合衆国軍隊のために労務に服する者であつて、その労働関係は私企業におけると同視し得ない面があるとしても、少くとも給与に関する限り、私企業の労働者と区別して取り扱うべき合理的根拠は見い出し難く、また所論のごとく、日本政府とアメリカ合衆国との間に締結されたいわゆる労務基本契約により、日本政府が駐留軍労務者に支払つた賃金その他の給与の費用はアメリカ政府から償還を受ける関係上、本件給与規程の休業手当に関する条項が労務基本契約附属スケジユールAの規定と符合するように立案されたとしても、スケジユールAには休業手当につき本件給与規程の休業手当に関する条項に相応するもののほか別段の規定はなく、しかも、原判決の確定した事実によれば、右規程の立案にあたり民法五三六条二項の適用を排除せんとする特段の配慮はなされなかつたというのであるから、本件給与規程の休業手当に関する条項は、原判示のように、労働基準法二六条と同様、休業、期間中における労働者の最低限度の生活を保障するため特に設けられた規定であつて、軍の都合による休業が民法五三六条二項にいう「債権者ノ者ニ帰スヘキ事由」に基づく履行不能広該当し、労務者が政府に対し全額賃金の支払を請求し得る場合にも、その請求権を平均賃金の六割に減縮せんとする趣旨に出たものではない、と解するのを相当とする。

されば、原判決には所論の違法はなく、論旨は、敍上と相容れない独自の見解に立脚するものであつて、採るを得ない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判官 池田克 河村大助 奥野健一 山田作之助)

被上告人目録<省略>

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