大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和39年(オ)1026号 判決 1966年4月15日

上告人

鈴木鏡平

右訴訟代理人

能村幸雄

被上告人

日本自動車株式会社

右代表者

小川浩正

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人能村幸雄の上告理由について。

原判決の認定した事実は、その対応する挙示の証拠により当審もこれを肯認しえないわけではない。そして、右認定した事実から、所論(ロ)および(ハ)の約束手形について、上告人は、弘陽商運の代表取締役として、事業の遂行につきはつきりとした見透しも、方針もなく、事業の拡張により収益を増加し、右手形金の支払が可能であると軽卒に考え、これらの手形により金融を受けて、その会社の資産・能力を顧慮しないで、調査不十分の事業に多額の投資をし破綻を招いたのは、会社の経営に当る取締役としては、著しく放漫なやり方であつて、右各手形の振出に関し、上告人において、その職務を行なうについて重大な過失があると認めるのが相当であり、この点の原判決の判断は、当審も正当として是認することができる。

原判決には、所論のような違法はない。

論旨は、これと異なる立場に立つて原判決を非難するか、または、原審の認定せざる事実を前提としてこれを非難するものであつて、とるをえない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(奥野健一 山田作之助 草鹿浅之介 城戸芳彦 石田和外)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例