最高裁判所第二小法廷 昭和39年(オ)1097号 判決 1967年3月10日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人寺井俊正の上告理由第一点について。
水産業協同組合法四条によれば、同法に基づいて設立された組合は、その行う事業によつて組合員または会員のために直接の奉仕をすることを目的とするのであつて、営利を目的とするものではないから、右組合が、その事業の一環として、みずから漁獲し、または組合員の漁獲した魚類を販売し、あるいは組合員等に対し、その事業、生活に必要な物資を販売する場合でも、当該組合は民法一七三条一号にいう「生産者」または「卸売商人」にあたらないと解するのが相当である(当裁判所昭和三七年七月六日第二小法廷判決、民集一六巻七号一四六九頁参照)。また、右組合とその組合員とは法律上別個の人格者であるから、組合員が生産者であるからといつて、右組合を前記法条にいう「生産者」に準ずるものと解すべきでないことは、当然である。されば、被上告組合がその組合員の漁獲した魚類を販売したことから生じた本件売掛代金債権については、前記法条が適用または準用されないとした原審の判断は、結局、正当であり、所論は、ひつきよう、右と異なつた見解に立つて原判決を攻撃するに帰するから、採用できない。
同第二点について。
被控訴人(上告人)が控訴組合(被上告組合)に対し所論の金七〇万円を貸与したことは認められない旨の原審の判断は、証拠関係に照らし、相当である。したがつて、原判決に所論の違法はなく、所論は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断および事実の認定を非難するに帰するから、採用できない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 奥野健一 裁判官 城戸芳彦 裁判官 石田和外 裁判官 色川幸太郎)