最高裁判所第二小法廷 昭和39年(オ)352号 判決 1965年3月19日
上告人
協栄不動産株式会社
右代表者
菅郁蔵
右代理人
伏見礼次郎
被上告人
市村キヨ子
ほか四名
右五名代理人
赤木淳
主文
原判決を破棄し、本件を大阪高等裁判所に差し戻す。
理由
上告代理人伏見礼次郎の上告理由について。
本件において、被上告人らは上告人に対し、本件不動産につき上告人のためになされた所有権移転登記および抵当権設定登記の抹消登記手続を求め、上告人において請求棄却の判決を求めたところ、第一審判決は、「原告らは仮処分後の登記である被告会社の登記の各抹消登記を本訴で求める必要は何等ないわけであるから、原告らの被告会社に対する請求は失当として棄却を免れない」旨判示して、被上告人らの上告人に対する右請求を棄却したものであることは、記録上明らかである。右第一審判決は、結局訴の利益がないとして被上告人らの請求を棄却したものであるから、形式的には上告人が全部勝訴の判決を得たかの如き観を呈するが、上告人は更に被上告人ら主張の前記登記抹消登記請求権の存在しないことの確定を求めるため、第一審判決に対し控訴の利益を有するものと解するのを相当とする。しかるに、上告人は第一審判決において勝訴しているから控訴の利益がないという理由で上告人の本件控訴を却下した原判決は、違法であつて、破棄を免れない。
よつて、本件を原審裁判所に差し戻すのを相当と認め、民訴法四〇七条一項に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(奥野健一 山田作之助 草鹿浅之介 城戸芳彦 石田和外)