最高裁判所第二小法廷 昭和39年(オ)984号 判決 1965年5月21日
上告人
○○圭作
右代理人
安井源吾
被上告人
○○森太
右代理人
小野敬直
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人安井源吾の上告理由について。
原判決が、挙示の証拠関係から、被上告人と上告人との原判示離別以来すでに一六年余を経過し、現在においてもはや両者間には経済的な扶養扶助の関係はもちろんのこと、通常の社会生活上一般に認められ要求される親子としての交際はみられず、また合理的な親子の関係として要請される精神的なつながりも全く失なわれているものと認めざるをえないとした上で、右のように養親子間における実質的な親子関係が客観的に破壊されたものと認められる場合に、一方の当事者がその養親子関係の解消を望むならば、養親子関係が破壊されるにいたつた原因が、全面的にまたは主として、その解消を望む当事者側にある等身分法を貫く正義の原則に著しく反する特段の事情がない限り、その当事者の離縁請求は、縁組を継続し難い重大な事由があるとして許されるべきであるとして、右特段の事情の主張立証なく、これを確認しうる訴訟資料のない本件にあつては、被上告人の上告人に対する離縁請求は右重大な事由の存在を原因として認容されなければならないとしたことは、首肯できる。
論旨一は、原判決の違憲をいい、論旨二は採証法則違反、理由不備をいうが、その実質は原審の専権たる証拠の取捨判断、事実の認定を非難するに帰着し、論旨三に掲げる判例は、いずれも事案が本件に適切でないから、論旨は、すべて採用できない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(奥野健一 山田作之助 草鹿浅之介 城戸芳彦 石田和外)