最高裁判所第二小法廷 昭和39年(行ツ)54号 判決 1968年11月15日
上告人
田丸道夫
代理人弁護士
吉井規矩雄
代理人弁理士
吉村庄吉
吉村悟
被上告人
荒井公平
代理上弁理士
中島信一
主文
原判決を破棄する。
被上告人の請求を棄却する。
訴訟の総費用は被上告人の負担とする。
理由
上告代理人吉井規矩雄、同吉村庄吉、同吉村悟の上告理由第一点について。
商品自体が取引上互いに誤認混同を生ずるおそれがないものであつても、それらの商品に同一または類似の商標を使用するときは、同一営業主の製造または販売にかかる商品と誤認混同されるおそれがある場合には、これらの商品は旧商標法(大正一〇年法律九九号)二条一項九号にいう類似の商品にあたると解すべきこと(当裁判所昭和三三年(オ)第一一〇四号同三六年六月二七日第三小法廷判決、民集一五巻六号一七三〇頁。なお、昭和三八年(オ)第九一四号同四一年二月二二日第三小法廷判決、民集二〇巻二号二三四頁参照)また、登録出願にかかる商標の指定商品が同法施行規則(大正一〇年農商務省令三六号)所定の類別のうち引用商標の指定商品をとくに除外したものであり、また両商品は互いに品質・形状・用途を異にするものであつても、それに同一または類似の商標を使用すれば同一営業主の製造または販売にかかる商品と誤認混同されるおそれがある場合には、これらの商品は、前記にいう類似の商品にあたると解すべきこと(当裁判所昭和三七年(オ)第九五五号同三九年六月一六日第三小法廷判決、民集一八巻五号七七四頁)は、すでに当裁判所の判例とするところである、
そして、以上の判例の趣旨とするところは、本件のごとく旧商標法二条一項一〇号に関する商品の類否の判定についても、そのまま妥当する。したがつて、原判決のいうごとく、本件商標の指定商品が、旧四三類「菓子及麺麭ノ類」からとくに上告人の有した商標の指定商品たる「餅」を除外したものであつて、また、それが餅とは品質・形状・用途等を異にする商品を含むものであるとしても、これら両者の指定商品は、必ずしも、つねにその製造・発売元を異にするものとはいえないから、同条一項一〇号にいう「類似ノ商品」に該当するものといわなければならない。
よつて、法令違背の論旨は理由があり、その余の点につき判断するまでもなく、原判決は破棄を免れず、本件審決の取消しを求める被上告人の本訴請求は、これを失当として棄却すべきものとし、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法四〇八条、九六条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(奥野健一 草鹿浅之介 城戸芳彦 石田和外 色川幸太郎)