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最高裁判所第二小法廷 昭和41年(オ)1295号 判決 1967年3月31日

上告人

武友小浪

上告人

宮蔭和衛

右両名訴訟代理人

豊川忠進

被上告人

(別紙記載一〇名の選定当事者)

山村睦治

右訴訟代理人

倉橋春雄

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人豊川忠進の上告理由第一点について。

原判決は、本件頼母子講は昭和三二年三月まで開講落札を行なつてきたが、運営が行き詰り、講の世話人たる新屋、金城の両名も講に対する熱意を失うに至つたので、その頃未取口講員が協議して同年四月以降、落札による方法を中止し、既取口者からの掛戻金を集めて未取口講員に対し平等に分配することを申し合せるに至つた事実を認定しているところ、右認定は挙示の証拠に照らして肯認できる。

論旨は、原判決が右事実関係から、本件頼母子講は右の時をもつてその正常な運営を廃絶し事実上の解散状態となり、実質的には、すでに講金を受領した既取口者(債務者的講員)とまだ講金を受領していない未取口者(債権者的講員)との間における原判示のような金員支払債務関係に転化したものというべきであるし、したがつて、未取口者が一体となつて既取口者に対しその掛戻金の支払を請求できることになつたとしている点に理由不備の違法があるという。

しかし、原審の認定するところによれば、本件頼母子講は、講元が自己の事業として講加入者を募集し自己の責任で運営するものではなく、講員が一団となつて協力して全員の事業として運営する組合類似の関係であつて、講世話人は講員全員の委託により掛金および掛戻金の取立その他の業務を執行するにすぎないものと解せられるから、原判決が前掲未取口講員の協議申し合せの結果、爾後講世話人の取立によることなく未取口者が一体となつて既取口者に対しその掛戻金の支払を請求できることになつたと判断したことは、正当であつ、この判断に所論違法はない。したがつて、論旨は採用できない。

同第二点について。

所論八日講と本件講とに関する支払充当の協定があつたとの主張は、原判決が証拠上認められないとしているところであり、これに関する原審の証拠の取捨判断に採証法則違反は見当らない。したがつて、論旨は採用できない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(奥野健一 草鹿浅之介 城戸芳彦 石田和外 色川幸太郎)

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