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最高裁判所第二小法廷 昭和41年(オ)1426号 判決 1967年6月02日

上告人

荒関辰三郎

右訴訟代理人

葛西千代治

被上告人

鈴木総弘

被上告人

荒井定次

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人葛西千代治の上告理由第一点について。

建物の一部であつても、障壁その他によつて他の部分と区画され、独占的排他的支配が可能な構造・規模を有するものは、借家法一条にいう「建物」であると解すべきところ、原判決の引用する第一審判決の確定した事実によれば、本件建物の(イ)(ロ)部分は、それぞれ障壁によつて囲まれ独占的排他的支配が可能な構造を有するというのであるから、原判決が(イ)(ロ)部分の賃貸借に対抗力があると判断したことは正当であつて、所論の違法は認められない。論旨は採用に値しない。

同第二点について。

原判決が確定した事実関係のもとにおいては、上告人の解約申入に正当の事由がないとした原判決の判断は相当であつて、所論の違法は認められない。論旨は採用できない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(奥野健一 草鹿浅之介 城戸芳彦 石田和外 色川幸太郎)

上告代理人葛西千代治の上告理由

第一点 「本件明渡しを求める部分は借家法第一条の建物に該当しない」

一、被上告人鈴木に対して明渡しを求める階下(ロ)の部分は借家法第一条にいう建物といえないので、その賃借権をもつて上告人に対抗することができない。即ち(ロ)の部分は鈴木本人調書に明かなように、

「元、車の製作及び修理工場で全部土間であつた。被控訴人鈴木は右土間の東側隅間口二間半、奥行四間の部分をベニヤ板で周囲を仕切り床板を張つて使用しているのである。「第一審鈴木本人調書」

このように賃借当時部屋として存在せず被上告人鈴木に於いて土間の一隅に一時的な仮仕切をした。即ち部屋の北東は、北側と東側は在来建物の一隅であり、鈴木が西側と南側をベニヤ板で仕切つて、土間に床を張つた一時的の一種の造作ともいうべきものであつて、独立性のないものである。「我妻債権各論中一五一〇頁」は、

借家法が適用されるためには、一部分の賃貸でもよいがある程度の独立性のあることを必要とする。たゞ建物の譲受人に対する対抗力の問題は、第三者に対する関係であるから、ある程度まで厳格に解する必要がある」とされておりますが、本件建物の譲受人である上告人に対する対抗力の問題を考うる場合は前叙の仮設区画の如きは、借家法第一条の建物に該らないものと解するを相当と思料するのであります。

然るにこれと異なる判断をした原判決は法律の解釈を誤つた違法あるを免れないものと存じます。

尚又原判決は、前叙上告人の主張に対して(完全なる部屋の賃貸借でないという趣旨の主張)右主張はそれ自体理がない、と一蹴したのは、右区画の独立性の有無についての重要な主張事実について判断を為さないか、或いは誤まれる判断を為した違法があるものと存じます。<後略>

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