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最高裁判所第二小法廷 昭和41年(オ)997号 判決 1967年9月01日

上告人

立正信用組合

右代理人

辻武夫

被上告人

合名会社ひまわり金融社

右代表清算人

植木春治

右代理人

沢田剛

右復代理人

永塚昇

主文

原判決を破棄し、第一審判決を取り消す。

被上告人の請求を棄却する。

訴訟の総費用は被上告人の負担とする。

理由

上告代理人辻武夫の上告理由第四点について。

原判決の確定した事実によると、被上告人は秋田哲治郎所有の本件不動産(宅地・建物)および判示山林について順位二番の抵当権を有し、その設定登記を経由していたところ、昭和三七年七月秋田から、前記抵当物件中右山林を処分して一番抵当権者と被上告人とに一部弁済する旨の申し入れをうけ、この山林の売却代金一三万円のうち被上告人は三万円を受領し、被上告人および一番抵当権者はこの山林についての抵当権設定登記の抹消登記手続をすることにし、同年九月被上告人は司法書士丸居源治にその手続を依頼したところ、同司法書士は誤つて本件不動産についての抵当権設定登記の抹消をも申請したため、同登記は抹消され、その後上告人は本件不動産について順位二番の抵当権設定登記をうけた、というのである。

登記が初めから全然ない場合と、一旦正当にされた登記がのちに抹消された場合とでは、第三者対抗力の点において区別して考うべきである(大正一二年七月七日大審院判決・民集二巻四四八頁参照)。しかし、本件においては、登記権利者である被上告人が委任した司法書士の錯誤による申請によつて登記が抹消されたのであつて、登記官吏の過誤によつて抹消された場合や、登記権利者以外の者が擅にした申請によつて抹消された場合と同一に論ずるのは相当ではない。けだし、後者の二つの場合には登記権利者に関係なく不法に抹消されたのであるが、本件においては、登記権利者がみずから委任した司法書士の申請によつて抹消されたのであるから、他の二つの場合と同視することはできないからである。そして、本件のごとく登記権利者の代理人の申請によつて登記が抹消された場合には、たとえ代理人に錯誤があつたとしても、取引の安全保護のために、第三者対抗力を喪失すると解すべきである(昭和一五年六月二九日大審院判決・民集一九巻一一一八頁参照)。

されば、抹消された本件抵当権設定登記になお第三者対抗力あることを前提として被上告人の請求を認容した一・二審判決には、民法一七七条の解釈を誤つた違法があるから、取消・破棄を免れず、前記説示に照らし被上告人の請求は棄却さるべきである。

よつて、民訴法四〇八条、三九六条、三八六条、九五条、八九条にしたがい、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(奥野健一 城戸芳彦 石田和外 色川幸太郎)

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