最高裁判所第二小法廷 昭和42年(オ)127号 判決 1967年6月02日
上告人(被告・控訴人) 胆振運輸株式会社
被上告人(原告・被控訴人) 原田正信
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告会社代表者櫛引鉄雄の上告理由について
会社名義で振り出された約束手形につき、手形面上に会社代表者として表示されている者に代表権はあるが、右代表者の記名押印をしたものに代表権がない場合であっても、会社が後者に対して専務取締役、常務取締役等会社を代表する権限を有するものと認められる名称を与えており、かつ、手形受取人が右後者の代表権の欠缺につき善意であるときは、右後者が自己の氏名を手形面上に表示した場合と同様、会社は手形金支払の責を負うものと解するのが相当である(昭和三七年(オ)第四三三号、同四〇年四月九日第二小法廷判決、民集一九巻三号六三二頁参照)。また、上告人が奈良岡武城に対し専務取締役なる名称の使用を許していたとの原判決(その引用する一審判決をふくむ。以下同じ)の認定は、その挙示する証拠から肯認することができる。
そこで、原判決挙示の事実関係から、上告人は被上告人に対し商法二六二条により、本件約束手形につき振出人として責任を負うべきものとする原判決の判断は、正当である。原判決に所論の違法はなく、論旨は採るを得ない。<以下省略>
(裁判長裁判官 奥野健一 裁判官 草鹿浅之介 裁判官 城戸芳彦 裁判官 石田和外 裁判官 色川幸太郎)
上告会社代表者櫛引鉄雄の上告理由<省略>