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最高裁判所第二小法廷 昭和46年(オ)1121号 判決 1972年3月31日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人堀家嘉郎の上告理由について。

原判決の事実認定は、挙示の証拠に照らして肯認することができる。そして、原判決認定の事実関係、とくに被上告人が訴外石川茂正と古くからの知己で、数年前から同人を通じて上告人と預金取引をしていたものであつて、石川を信頼していたため、同人の勧誘に応じ本件の預金に及んだものであるなどの事情のもとにおいては、本件預金の利息がきわめて高率であり、預金の授受に際し石川の交付した領収証が上告人の所定のものでなかつたことなどの事実を考慮しても、被上告人において、石川が本件預金を受領する行為を同人の職務権限内における適法な行為と信じたことにつき重大な過失があつたものということはできないとした原審の判断は、正当として是認することができる。原判決の認定・判断に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 色川幸太郎 裁判官 村上朝一 裁判官 岡原昌男 裁判官 小川信雄)

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