最高裁判所第二小法廷 昭和46年(オ)50号 判決 1971年5月21日
上告人
長和子
外二名
代理人
榎赫
被上告人
長万吉
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
理由
上告代理人榎赫の上告理由一について。
所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯することができ、右事実認定に至る過程に所論の違法を認めることはできない。原判決に所論の違法はなく、論旨は、ひつきよう。原審の専権に属する証拠の取捨、事実の認定を非難するものであつて、採用することができない。
同二について。
原審が適法に確定した事実によれば、被上告人は、上告人長和子との間の婚姻関係が完全に破綻した後において、訴外鈴木フミ子と同棲し、夫婦同様の生活を送り、その間に一児をもうけたというのである。右事実関係のもとにおいては、その同棲は、被上告人と右上告人との間の婚姻関係を破綻させる原因となつたものではないから、これをもつて本訴離婚請求を排斥すべき理由とすることはできない。右同棲が第一審継続中に生じたものであるとしても、別異に解すべき理由はない。右と同旨の原審の判断は正当として首肯することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は、ひつきよう、原審の認定にそわない事実を前提とするか、独自の見解に基づき原判決を攻撃するものであつて、採用することができない。
よつて民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(色川幸太郎 村上朝一 岡原昌男 小川信雄)
上告代理人の上告理由
原判決には、法令違背があり、判決に影響を及ぼすこと明らかである。
一、(経験則違反)<省略>
二、(法令解釈の誤り)
仮に右の点が容れられないとしても、少くとも上告人長和子と被上告人との婚姻解消について、被上告人は原判決が二四丁六行目から九行目にかけて認めるとおり、第一審継続中の昭和四十二年十月鈴木フミ子と同棲しているが、これにつき原判決は右同棲は上告人和子との婚姻関係が完全に破綻してからのことであるという。しかし、第一審判決が未だ言渡されていない時点において、妻以外の女性と同棲するということは、被上告人自身の不真面目な生活態度を示す有力なる事実であり、宥恕さるべきことではない。
一般に有責配偶者の離婚請求を否定すべきことは、既に確立された法理であり、これは公平の原則に適うばかりでなく、一夫一婦制を維持する現代社会においては極めて当然のことである。
特に本件のように上告人和子が双方の間に誕生した子供の将来を考え、強く婚姻の維持を希望している場合においては尚更である。
原判決は、両者間に愛情に満ちた夫婦共同生活を回復する見込は殆ど絶無に近いものと考えられるというが、仮に右事実を考慮に入れても、被上告人の有責性が消去されるわけではないことは明らかである。
この点、原判決が両者間の婚姻を継続し難い重大なる事由があるとしたことは、離婚についての法解釈を誤つたものというべきである。