最高裁判所第二小法廷 昭和47年(オ)1052号 判決 1973年6月29日
上告人
京急日産自動車株式会社
右代表者
畑野満
右訴訟代理人
山田盛
被上告人
倉石庄一
外四名
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人山田盛の上告理由について。
原審の適法に確定した事実によると、千代田火災海上保険株式会社交通事故傷害保険普通保険約款第四条は、「当会社は、被保険者が第一条の傷害を被り、その直接の結果として、被害の日から一八〇日以内に死亡したときは、保険金額の全額を保険金受取人、もしくは保険金受取人の指定のないときは被保険者の相続人に支払います。」と規定するところ、本件保険契約は右約款に基づき、これをその契約内容として締結されたというのである。
ところで、右「保険金受取人の指定のないときは、保険金を被保険者の相続人に支払う。」旨の条項は、被保険者が死亡した場合において、保険金請求権の帰属を明確にするため、被保険者の相続人に保険金を取得させることを定めたものと解するのが相当であり、保険金受取人を相続人と指定したのとなんら異なるところがないというべきである。
そして、保険金受取人を相続人と指定した保険契約は、特段の事情のないかぎり、被保険者死亡の時におけるその相続人たるべき者のための契約であり、その保険金請求権は、保険契約の効力発生と同時に相続人たるべき者の固有財産となり、被保険者の遺産から離脱したものと解すべきであることは、当裁判所の判例(昭和三六年(オ)第一〇二八号、同四〇年二月二日第三小法廷判決・民集第一九巻第一号一頁)とするところであるから、本件保険契約についても、保険金請求権は、被保険者の相続人である被上告人らの固有財産に属するものといわなければならない。なお、本件保険契約が、団体保険として締結されたものであつても、その法理に変りはない。
してみると、右と同旨の原審の判断は正当として首肯することができ、原判決に所論の違法はなく論旨は採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(小川信雄 岡原昌男 大塚喜一郎)
上告理由<略>