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最高裁判所第二小法廷 昭和47年(オ)930号 判決 1974年12月06日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人大久保弘武、同鈴木光友、同岩本充司の上告理由について。

原審が適法に確定したところによれば、被上告人の従業員である鈴木喜代一は、被上告人所有の自動車を私用に使うことを厳重に禁止されていたにもかかわらず、勝手に持ち出して夜桜見物に出かけようとしたが、その際、母から被上告人所有の自動車は私用に使うことを禁止されているのであるから夜桜見物に出かけることをやめるように戒められていつたんその気になつたものであるところ、その場に居合わせた鈴木良二、仲山清雄、河合和弘は、被上告人がその所有自動車を私用に使うことを禁止していることを承知していながら、夜桜見物の決行を強く主張し、積極的に鈴木喜代一をそそのかして同人ともども右自動車に同乗して出かけ、その帰途原判示の地点において鈴木喜代一の運転する右自動車が大型貨物自動車に正面衝突し、そのため鈴木喜代一及び右同乗者三名がいずれも即死したというのである。

このような本件の事実関係のもとにおいては、本件事故によつて右同乗者及びその相続人らに関し生じた損害につき、右相続人らが被上告人に対し自動車損害賠償保障法三条に基づく運行供用者責任を問うことはできないとした趣旨の原審の判断は、正当として是認することができる。所論引用の判例は、事案を異にし本件に適切でない。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小川信雄 裁判官 岡原昌男 裁判官 大塚喜一郎 裁判官 吉田 豊)

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