大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和48年(あ)1365号 判決 1974年12月20日

主文

本件各上告を棄却する。

理由

弁護人岡部勇二の上告趣意(昭和四八年七月三〇日付及び同年八月一日付各上告趣意補充書によるものを含む。以下同じ。)のうち、憲法三一条違反をいう点について。

所論は、漁業法六五条及び水産資源保護法四条が都道府県知事に対して罰則を制定する権限を賦与したことは、罪刑法定主義を定めた憲法三一条に違反し、したがって、右各法条に基づく茨城県内水面漁業調整規則(以下本件規則という。)二七条及び三七条一項も憲法三一条に違反する、という。

しかし、憲法三一条はかならずしも刑罰がすべて法律そのもので定められなければならないとするものでなく、法律の具体的授権によってそれ以下の法令によって定めることもできると解すべきであることは、当裁判所の判例(昭和二三年(れ)第一四一号同二五年二月一日大法廷判決・刑集四巻二号七三頁、昭和二七年(あ)第四五三三号同三三年七月九日大法廷判決・刑集一二巻一一号二四〇七頁、昭和三一年(あ)第四二八九号同三七年五月三〇日大法廷判決・刑集一六巻五号五七七頁)の趣旨とするところである。そして、漁業法六五条及び水産資源保護法四条は、漁業調整又は水産資源の保護培養のため必要があると認める事項に関して、その内容を特定し、刑罰の種類、程度を限定して、罰則を制定する権限を都道府県知事に賦与しているところ、右各規定が憲法三一条に違反しないことは、前記判例の趣旨に照らし、明らかである。また、本件規則の規定内容が右各法律の授権の範囲内にあることは規定自体から明らかである。よって、憲法三一条違反をいう論旨は理由がない。

弁護人岡部勇二の上告趣意のうち、その余の点について。

所論のうち、憲法一四条違反をいう点は、本件規則が漁民に不当な特権を与えたものとは認められないから、前提を欠き、また、憲法一三条違反をいう点は、本件規則が、地方自治法一六条五項、四項の規定に基づく茨城県公告式条例(昭和三五年茨城県条例第三号)に則り、茨城県報に登載されていることは原判決の確定するところであるから、前提を欠き、さらに、憲法七六条三項、九九条違反をいう点は、原判決に対する具体的論難ではなく、その余の点は、単なる法令違反、量刑不当の主張であって、いずれも刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。

よって、同法四〇八条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 吉田豊 裁判官 岡原昌男 小川信雄 大塚喜一郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例