大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和49年(オ)347号 判決 1974年11月29日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由について。

下級裁判所事務処理規則六条に基づき定められる下級裁判所の裁判事務の分配に関する定めは、その裁判所において所属裁判官の間の裁判事務の分担を定める内部的定めにすぎないものであるから、裁判官が右事務分配の定めによればその担当とされていない裁判事務を行つたからといつて、そのことから直ちにその裁判官に、同裁判官の所属する裁判所の事件につき裁判権がなかつたとか、右裁判官によつてされた手続が訴訟法に違背して無効となるということはできない。

本件についてこれを見るに、本件第一審判決は、昭和四八年九月一四日鳥取地方裁判所米子支部裁判官甲野一郎によつて言い渡されたのであるが、同裁判所の当時の裁判事務分配の定めによると、同裁判官は民事単独事件を担当することにはなつていなかつたのであるから、同裁判官によつてされた右判決の言渡しは右事務分配の定めに違背したものといわなければならない。しかしながら、本件記録によると、右裁判官は、本件第一審の最終口頭弁論期日まで裁判事務分配の定めに従つてその審理を担当し、弁論終結後右言渡しまでの間に裁判事務分配の定めに変更があつたこと、同裁判官は弁論終結までその審理を担当していた関係上そのまま判決を言渡したものであることが認められるのであり、これによれば前判示のとおり、右裁判官に右判決言渡しに関する裁判権があつたことは明らかであり、該言渡しが訴訟法に違背し無効となるものでないことも明らかである。したがつて、右言渡しを有効とした原審の判断は正当であり、原判決に所論の違法はない。また、右違法のあることを前提とする所論違憲の主張はその前提を欠く。論旨は、採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 大塚喜一郎 裁判官 岡原昌男 裁判官 小川信雄 裁判官 吉田 豊)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例