大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和51年(行ツ)58号 判決 1976年10月01日

上告人 大宝電化工業株式会社

被上告人 伊丹税務署長

訴訟代理人 奥原満雄

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人野村清美の上告理由の(一)について

被上告人が上告会社の係争年度にかかる法人税の青色申告書提出承認取消処分を取り消したことにより上告会社が帳簿書類の記載に基づかず推計により課税をされることのない保障を受けるのは、上告会社の青色申告書にかかる法人税の課税標準又は欠損金額の更正の場合についてであり(法人税法一三〇条、一三一条参照)、上告会社が所得税法に基づき源泉徴収をすべき所得税についてまでその保障が及ぶものでないことは明らかであるから、右所得税についてもその保障が及ぶことを前提とする所論はその前提を欠き失当である。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

同一の(二)について

原審が確定した事実によれば、昭和四一年一二月二〇日上告会社と訴外兵庫日本交通株式会社(以下、訴外会社という。)との間で上告会社のタクシー営業権及び営業上の積極消極財産を代金二〇〇〇万円と定めて訴外会社に譲渡する旨の契約が締結されたが、右契約については所轄陸運局長の認可がその効力発生要件であるところ、右代金は当時の上告会社代表取締役であつた訴外田中喜一の希望により譲渡契約発効前の同四一年一二月二〇日一〇〇〇万円、同四二年三月一六日一〇〇〇万円が右田中に交付され、同四二年四月四日大阪陸運局長より営業譲渡の認可がされたというのであり、原審の右事実認定は原判決挙示の証拠関係に照らし是認することができる。右事実関係によれば、右譲渡契約は大阪陸運局長の営業譲渡の認可のあつた昭和四二年四月四日発効し、同日、上告会社は譲渡代金を取得しこれを田中喜一に賞与として支給したものと解するのが相当であつて、右支給につき上告会社は昭和四二年四月分の所得税の源泉徴収をすべきであるとしてその納税告知及び不納付加算税の決定をした被上告人の処分に違法はないとした原審の判断は正当であり、原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判官 犬塚喜一郎 岡原昌男 吉田豊 本林譲 栗本一夫)

上告理由<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例