最高裁判所第二小法廷 昭和53年(あ)2288号 判決 1979年12月14日
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人真野毅、同平川実、同鈴木富七郎、同山田勝利の上告趣意第一点について
所論は、憲法三一条、三七条違反及び判例違反をいう点もあるが、実質はすべて単なる法令違反の主張であって、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。
同上告趣意第二点について
所論のうち、麻薬取締法一二条一項違反の故意に関する判例違反をいう点は、実質において事実誤認の主張に帰し、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。その余の判例違反をいう点は、原判示第一の営利の目的による麻薬の譲受けと同第二の営利の目的による右麻薬の譲渡しの両罪を併合罪とした原判決が、右と同種の両罪を牽連犯とする所論引用の高等裁判所の判例(広島高裁昭和二八年(う)第七八三号同二九年三月一一日判決・高刑集七巻三号二九五頁、同裁判所昭和二九年(う)第六八二号同三〇年三月二三日判決・広島高検速報昭和三〇年一一号、東京高裁昭和三三年(う)第二四八三号同三四年九月七日判決・東京高検速報八〇八号)と相反する判断をしたものにあたることは、所論指摘のとおりである。
しかし、麻薬取締法は、麻薬の濫用による保健衛生上の危害を防止するため、麻薬の輸入、輸出、製造、製剤、譲渡し、譲受け、所持等の各行為を個別に規制し、営利の目的を刑の加重事由として設け、これを麻薬の譲受け・譲渡しのみならず他の違反行為についても付加していることにかんがみれば、麻薬の譲受けとその麻薬の譲渡しは、たとえそれが営利の目的で行われたものであるとしても、犯罪の通常の形態として手段又は結果の関係にあるものと解することはできず、右両罪は併合罪とするのが相当であるから、刑訴法四一〇条二項により所論引用の判例を変更し原判決を維持することとする。したがって、判例違反をいう所論は、結局、原判決破棄の理由にはならない。
同上告趣意第三点及び第四点について
所論は、事実誤認、単なる法令違反及び量刑不当の主張であって、いずれも刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。
よって、同法四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 大塚喜一郎 裁判官 栗本一夫 裁判官 木下忠良 裁判官 塚本重頼 裁判官 鹽野宜慶)