最高裁判所第二小法廷 昭和53年(オ)1179号 判決 1979年4月13日
主文
原判決中、上告人敗訴部分を破棄する。
前項の部分につき本件を大阪高等裁判所に差し戻す。
理由
上告代理人松岡滋夫の上告理由について
地代家賃統制令施行規則一一条所定の事業用部分の面積は、建築基準法施行令二条一項三号又は四号の定める床面積又は延べ面積の算定方法によつて算定すべきものと解するのが相当である(最高裁昭和五三年(オ)第二〇七号同年五月二五日第一小法廷判決・裁判集民事第一二四号六九頁登載予定参照)。
これを本件の場合についてみるに、所論の「さし出し部分」に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯するに足り、右認定事実のもとにおいては、本件建物の事業用部分の面積を算定するにあたり、「さし出し部分」を除外すべきものとした原審の判断は、正当として是認することができる。右認定判断の過程に所論の違法はなく、この点に関する論旨は理由がない。
しかしながら、原判決が、事業用部分の面積は周壁の内側部分の面積により算定すべきである旨判示したうえ、本件建物のうち事業用部分の周壁の内側部分の面積が二二・七六平方メートルであることを確定しただけで、本件建物は、事業用部分が二三平方メートル以下のものであり、地代家賃統制令二三条二項にいう併用住宅に該当し、同令の適用があるものと判断し、上告人の請求を一部棄却したのは、前記説示と見解を異にするものであつて、法令の解釈適用を誤つた違法があるものというべきであり、この違法が原判決中、上告人敗訴部分に影響を及ぼすことは明らかである。この違法をいう論旨は理由があり、原判決中、右の上告人敗訴部分は、その余の論旨について判断するまでもなく、破棄を免れない。本件は、本件建物の事業用部分の面積についてさらに審理を尽くさせるため、原裁判所に差し戻すのが相当である。
よつて、民訴法四〇七条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 栗本一夫 裁判官 大塚喜一郎 裁判官 本林 讓)