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最高裁判所第二小法廷 昭和54年(行ツ)110号 判決 1982年12月17日

上告人 森井竹枝

被上告人 京都府知事

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由について

一般に社会保障法制上、同一人に同一の性格を有する二以上の公的年金が支給されることとなるべき、いわゆる複数事故に対し、杜会保障給付の全般的公平を図るため公的年金相互間における併給調整を行うかどうかは、立法府の裁量の範囲に属する事柄と見るべきであることは、すでに当裁判所の判例とするところであり(最高裁昭和五一年(行ツ)第三〇号同五七年七月七日大法廷判決・民集三六巻七号一頁)・また、右判例は、杜会保障立法において、受給者の範囲、支給要件、支給金額につきなんら合理的理由のない不当な差別的取扱をするような内容の定めを設けているときは、別に、憲法一四条違反の問題を生じうると解すべきであるとしている。しかしながら、国民年金法二〇条は、単に障害福祉年金受給権者に止まらず、他のすべての年金法による年金受給権者について年金の併給を禁止しているものであり、また、原審の適法に確定した事実関係のもとにおいて、右条項の適用により上告人のように障害福祉年金を受ける地位にある者と、戦争公務による公的年金を受けることができる地位にある者との間に老齢福祉年金の受給に関して取扱いの差異を生ずることになるとしても、戦争公務による公的年金の法的性格に照らすと、右差異が事柄の性質に応じた合理的理由によるものであつて、立法府に許容された裁量の範囲内にある、とした原審の判断は、正当として是認することができる。所論違憲の主張は、ひつきよう、原審の右判断の不当を主張するものにすぎず、採用することができない。

よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判官 木下忠良 鹽野宜慶 宮崎梧一 大橋進 牧圭次)

上告理由<省略>

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