最高裁判所第二小法廷 昭和57年(行ツ)18号 判決 1986年12月05日
上告人 神谷明男
被上告人 刈谷税務署長
代理人 崇嶋良忠
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人竹下重人の上告理由第一点及び第二点について
原審の適法に確定した事実関係のもとにおいて、本件相続税の課税財産は本件農地の売買契約に基づき買主たる被相続人が売主に対して取得した当該農地の所有権移転請求権等の債権的権利と解すべきであり、その価額は右売買契約による当該農地の取得価額に相当する一九六五万一四七〇円と評価すべきであるとした原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。所論違憲の主張のうち、農地の譲渡に係る譲渡所得課税等における取扱いとの不均衡を前提とする主張は、右取扱いは専ら所得税等の課税時期に関するものであつて相続税の課税対象となる財産いかんの問題とは全くその性質を異にするから、その前提において失当というべきであり、また、「相続税財産評価に関する基本通達」(昭和三九年直資五六、直審(資)一七)の定める評価方法による農地の評価との不均衡を前提とする主張は、本件相続税の課税財産は具体的な売買契約によりその時価が顕在化しているとみられる前記債権的権利であつて、これを所論の通達の定める評価方法により評価するものとされている農地自体と同様に取り扱うことはできないから、やはりその前提において失当というほかない。論旨は、採用することができない。
同第三点について
所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。
よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判官 藤島昭 牧圭次 島谷六郎 香川保一 林藤之輔)
上告理由 <略>