大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和22(れ)96 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人星野耕作上告趣意書 一、原判決ハ審理不尽ノ違法アルモノト信ズ、本件

ニ付原審弁護人ニ於テ正当防衛ノ主張アリ、此ノ主張ノ成否ニ関シテハ原審ハ充分

事実並ニ証拠調ヲナス事ヲ必要トス。原判決ノ如ク一概ニ喧嘩中ノ所為ニ付テハ正

当防衛ヲ認ムルヲ得ズトナスヲ得ザル可ク、喧嘩中ノ行為ニ付テモ状況ニ応ジテハ

正当防衛ノ成立スル場合モアリ得ベシ。原判決が右主張ニ対シテ尚審理ヲ必要トス

可キ点ハ、(一)被告人ノ使用セル兇器(庖丁)ノ鋭鈍ノ程度 (二)被害当時ニ

於ケル被害者ノ着衣ノ厚薄ニシテ被告人が兇器ヲ構ヘタ瞬間被害者が勢ヒ込ンデ飛

ビ掛リタリトセバ兇器ハ固定スル事アリ得可ク兇器ノ鋭利着衣ノ薄サニヨリ或ハ本

件被害者ノ受ケタル創傷ヲ惹起スルヤモ知レズ。原審ハ之等ノ被告人ノ利益トナル

可キ事実ニ付須ク鑑定鑑定人訊問等ニヨリ右主張ニ付充分審理ヲ尽サザル可カラザ

ルニ拘ラズ此点ニ付証拠調ヲナサザルハ審理不尽ノ違法アルモノト思料ス。二、原

判決ハ理由齟齬ノ違法アルモノト信ズ、原判決ノ証拠説明ニヨレバ「前略、殴リ合

ヒヲ続ケ最後ニAヲ止メタトコロ同人ハ其処ニ屈ム様ニシテ倒レタガ其際AカB(

被告)ニ襲ヒ掛ツタモノデハナイ様ニ思フ旨ノ供述」トアルモ右説示ニ該当ス可キ

供述ナシ、記録ヲ閲覧スルニ当時ノ状況ニ関スルCノ証言ハ、(一)83丁「何方

カヲ引離シテヤラナケレバナラヌト思ヒ突差ノ場合ノ事デアリマスカラAノ方ヲ掴

マヘテ引離シマシタ」(二)181丁「私モ誰カニ殴ラレタガ最後ニ私ガAヲ押除

ケタ際Aガ其処へ仆レルカ転ガルカシマシタ、スルトBガモウ止メ様トカ何トカ云

ツテ近クノ私方ニ行キマシタ」(三)299丁問「証人がAヲ止メタ瞬間ニ同人ハ

屈ミ腹ヲ殴ラレタラシイト云フノダネ」答「左様デアリマス」問「共ノ際AハBへ

殴リ掛ル態度デアツタカ」答「左様ナ態度ハナカツタ様ニ思マス」ノ三アルノミニ

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シテ其他見当ラズ、右三供述ノ内説示ニ近キモノハ(三)ナルモ三ノ「其際AハB

へ殴リ掛ル態度デアツタカ」トノ趣旨ハCガAヲ止メタ瞬間ニAガBへ殴リ掛ル態

度デアツタカト云フ事ニシテ説示ノ趣旨トハ全然相違スル事明瞭ナリ。原判決ハ理

由齟齬ノ違法アリ破棄ヲ免レザルモノト思料ス。

と云うにあるけれど所論は原判決に審理不尽或いは理由齟齬の違法があると云う

ものの、その趣旨とするところは要するに原判決が被告人の所為を目して正当防衛

行為ではないと認めたことに対して異議を述べるのであるから、かような主張は結

局原判決の事実認定に対する非難に外ならないので、論旨は適法な上告の理由と云

うことはできない。尚所論中に、原判決が証拠として採用した原審における証人C

の供述の判示が虚構である旨を主張しているが、該証人の供述内容を原審公判調書

中の記載によつて検討してみると、そこには明かに判示と同旨の記載のあることを

見出し得るので、この点に関する非難も亦当らない。従つて、論旨は凡て理由がな

い。

右の理由をもつて、刑事訴訟法第四百四十六条に則り主文の如く判決する。

この判決は裁判官の全員一致の意見によるものである。

被告人の上告趣意書は、法定期間経過後に当裁判所に到達したので、これに対し

ては判断しない。

検察官十蔵寺宗雄関与。

昭和二十二年十一月八日

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 塚 崎 直 義

裁判官 霜 山 精 一

裁判官 栗 山 茂

裁判官 小 谷 勝 重

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裁判官 藤 田 八 郎

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