最高裁判所第二小法廷 昭和23(れ)1259 判決
主 文
本件各上告を棄却する。
理 由
被告人B弁護人川名仲司郎上告趣意第一点及び被告人C弁護人脇田久勝の上告趣
意第二点同第四点について。
論旨は、原判決は予審第一回訊問調書中に於ける被告人両名の各供述記載を証拠
としているが、「右予審の供述は不当に長く拘禁された後の自白であり又は警察に
於ける拷問若くは脅迫による影響のあることを十分疑はしむるに足る自白であるか
ら」証拠とすることができぬものを証拠とした違法があると言うのである。しかし、
記録を精査すると、被告人両名が警察で身柄を拘束されたのは昭和二二年一月一四
日であつて、同年三月一三日に予審第一回訊問がされている。その間検事局を経て
引続き拘束されていたと推測されるけれども、その期間は五九日であるが、この種
強盗被疑事件としては、右の期間は、決して不当に長いとは認められない。殊に、
被告人等は、拘禁後一ケ月余を経過したに過ぎない同年二月一七日強制処分による
予審判事の訊問に対しても、すでに、本件犯行を自白しているのであつて、原判決
が証拠とした予審第一回訊問における被告人等の自白は、被告人等に対する長い拘
禁が原因となつてなされたものとは考えられない。(昭和二二年(れ)第二七一号
昭和二三年六月三〇日言渡大法廷判決参照)次に、原審公判調書には、両被告人が
夫々警察で拷問又は脅迫をうけた旨の供述があることは、所論のとおりであるが、
仮りに警察でかかる事実があつたとしても、予審では、何等右様の強制が加わつた
形跡もなく、また、予審における両被告人の供述自体が、警察での拷問等に影響さ
れている痕迹は、本件のどこにも、みられないのであるから、右予審における被告
人等の供述を証拠とした原判決に、所論のごとき違法ありということはできない。
加之原審において弁護人が警察における拷問若しくは脅迫の事実を明にするため
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Aの証人申請をしたにも拘らず却下されたとしても、原判決は警察における両被告
人の各聴取書を証拠として採用していないのであるから、採証法上の違法はない。
それ故論旨は理由がない。
被告人B弁護人川名仲司郎上告趣意第二点及び被告人C弁護人脇田久勝上告趣意
第三点について。
しかし刑訴応急措置法第一二条第一項は必しも同条に基いて訊問された証人の供
述を証拠として採用しなければならないという趣旨の規定ではないのであるから、
原審がかかる証拠を採用せずして他の証拠を採用したのは事実審の専権に属する事
項である。原審の採証には何等違法はないから論旨は理由がない。
被告人C弁護人脇田久勝の上告趣意第一点について。
論旨は要するに原判決の認定した事実を争うことに帰するから上告適法の理由と
して採用できない。
よつて、刑訴施行法第二条及び旧刑訴法第四四六条により主文のとおり判決する。
右は裁判官全員の一致した意見である。
検察官 小幡勇三郎関与
昭和二四年三月一二日
最高裁判所第二小法廷
裁判長裁判官 塚 崎 直 義
裁判官 霜 山 精 一
裁判官 栗 山 茂
裁判官 藤 田 八 郎
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