最高裁判所第二小法廷 昭和23(れ)1324 判決
主 文
本件上告を棄却する。
理 由
弁護人獅山知孝の上告趣意について。
論旨は、原判示第一の事実に関して、原判決が被告人の所為を選挙妨害の程度と
認定したことを非難している。しかし原判決がその挙示の証拠によつて認定したと
ころによれば、被告人は、市長候補者の政見発表演説会の会場入口に於て、応援弁
士B及びCの演説に対し大声に反駁怒号し、弁士の論旨の徹底を妨げ、さらに被告
人を制止しようとして出て来た応援弁士Aと口論の末、罵声を浴せ、同人を引倒し、
手拳を以てその前額部を殴打し、全聴衆の耳目を一時被告人に集中させたというの
であるから、原判決がこれを以て、衆議院議員選挙法第一一五条第二号(原判決文
に「第一号」とあるのは、「第二号」の誤記であること明かである)に規定する選
挙に関し演説を妨害したものに該当するものと判断したのは相当であつて、所論の
ような誤りはない。仮りに所論のように演説自体が継続せられたとしても、挙示の
証拠によつて明かなように、聴衆がこれを聴き取ることを不可能又は困難ならしめ
るような所為があつた以上、これはやはり演説の妨害である。又被告人の行為の原
因や意思が所論の通りであつたとしても、演説妨害の行為があつた以上その責任を
問われるのは当然である。更らに被告人の選挙権停止を附随する罰則を適用した原
判決を不当とするのは、結局量刑不当の主張に帰するから、適法な上告理由とはな
らない。
原判示第二の事実は、右第一の事実の約三〇分後に、被告人は、前記応援弁士と
して選挙運動をしていたAに対する余憤が去らず演説会場に接する弁士控室に押し
かけ、応援弁士Bを罵り始めこれを制止したAに対して、興奮の余、手拳を以てそ
の前額部を二回殴打したというのであるから、これはまさしく衆議院議員選挙法第
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一一五条第一号(原判決文に「第二号」とあるのは「第一号」の誤記であること明
かである)にいわゆる、選挙に関し選挙運動者に暴行を加えたものに該当する。こ
れを単なる個人同志の争いであつて選挙の妨害でないとする所論は理由がない。
右の理由により刑事訴訟法第四四六条に従い主文の通り判決する。
以上は裁判官全員一致の意見によるものである。
検察官 宮本増蔵関与
昭和二三年一二月二四日
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 長 谷 川 太 一 郎
裁判官 井 上 登
裁判官 河 村 又 介
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