大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和23(れ)1769 判決

主 文

本件各上告を棄却する。

理 由

被告人A弁護人岡田久恵上告趣意第一点について。

記録によれば、被告人は、はじめ、強姦未遂事件の容疑者として(同事件は、後

第一審判決において、公訴棄却を言渡された)昭和二三年四月二六日所轄警察署に

引致拘禁され、即日司法警察官に対し右強姦未遂の犯行を自白し、翌二七日検察事

務官に対し右と同様の自白を為した外、本件強姦致傷事件に関し、相被告人Bを教

唆した旨の簡単な自白を為し、更に同年五月一日被告人に対する司法警察官の所論

第二回聴取書記載の如き自白を為したものであることが明かである。即ち被告人は

当初から自発的に供述したものであつて、自白の任意性に所論司法警察官が不当の

圧迫乃至脅迫を加えた客観的事実はどこからも窺われない。被告人が僻地に住む無

学無筆の老人であつて司法警察官に対して所論の如き心理的強制乃至圧迫を感じて

いたとしても司法警察官が不当の強制圧迫を加えた客観的事実のない限りその自白

の任意性を否定することはできない。所論は憲法第三八条第二項適否の問題を判断

するまでもなく自白の任意性に関する前提において既に失当である。

なお、右自白は逮捕拘禁後僅か五日にして為されたものであるばかりでなく、前記

の如き経過によつて為されたものであるから、被告人に対する拘禁との間に因果関

係のないことも極めて明白である。従つて、この自白を証拠とした原判決は何ら憲

法第三八条第二項に違反するものではなく、論旨は理由がない。(昭和二三年六月

三〇日言渡同二二年(れ)第二七一号大法廷判決参照)

同第二点について。

論旨は被教唆者(正犯)である相被告人Bの本件強姦の行為により、被害者に局

部傷害の結果を発生することを教唆者である被告人が教唆当時予見していなかつた

- 1 -

ことを前提とするものであり、原判決事実摘示中には右予見の有無につき別段判示

するところはないけれども、原判決はその証拠説明において被告人の第一審におけ

る被害者「Cが一三歳未満の発育不良の少女でこれを姦淫すれば、局部に傷害を生

ずることを知つていたという趣旨の供述」を挙示していることに鑑れば、原判決は

被告人が前記傷害の結果の発生を教唆当時既に予見していたものと認定した趣旨で

あると解すべきである。従つて教唆犯の性質の如何に拘らず、被告人が本件傷害の

点について、責任を負うべきは当然の事理であり、論旨はその前提において既に、

失当であつて、理由がない。

被告人B弁護人河合将興上告趣意について。

執行猶予を附するかどうかは、事実審裁判所が諸般の状況を勘考して自由な裁量を

以つて決するところに委かされているのであつて、所論のような事情があつたと仮

定しても裁判所が刑の執行猶予の言渡をなすべき責務があるとする明文の規定も実

験則も存しないから論旨は理由がない。

よつて「刑訴施行法第二条、旧刑訴第四四六条に従い、主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員の一致した意見によるものである。

検察官 茂見義勝関与

昭和二四年四月二三日

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 霜 山 精 一

裁判官 栗 山 茂

裁判官 小 谷 勝 重

裁判官 藤 田 八 郎

- 2 -

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!