最高裁判所第二小法廷 昭和23(れ)324 判決
主 文
本件上告を棄却する。
理 由
弁護人鈴木重一伊藤幸人の上告趣意は「原判決ハ其理由中「被告人は第一昭和二
十二年二月二十六日より同年五月三十一日迄の間前後八回に亘り東京都中野区a町
b番地B方外都内七ケ所に於てA外八名所有の衣類雑品四十数点を窃取し」トセラ
レ其証拠説明ニ於テ「証拠を按するに右の事実は犯意継続の点を除き一、被告人の
当公廷に於ける判示同旨の供述一、A、C(昭和二十二年二月二十七日附記録第五
十丁)及同年五月二十日附(記録第六十六丁―六十八丁)D、E、F、G、H提出
の各盗難被害届中判示第一事実に照応する各被害顛末記載」ト説明セラレタリ、然
ルニ記録中被害品所有者ノ判明セル者ハA、C(C昭和二十二年二月二十七日附盗
難被害届ニハ栂印ナク捺印モナシ)I、J、Kノ五名ノミニテ他ノ四名ノ氏名ヲ知
ルニ由ナシ是ニヨリテ之ヲ看レバ判示事実中所有者九名ト摘示シ乍ラ之ニ照応スベ
キ証拠ニ於テ四名不足シ居レルハ即チ証拠ニ依ラズシテ事実ヲ認定シタル不法アル
ノミナラズ被害者ノ捺印栂印ナキ届書ヲ採用シタル不法アリテ原判決ハ破棄ヲ免レ
ズト信スというのである。しかし、原判決が、証拠として引用している各盗難被害
届によれば、判示第一、窃盗の事実について盗品の所有者A外七名の氏名を知るこ
とができる。ただ、判示にかかる被害者一名の氏名を知ることができないけれども
およそ連続にかかる窃盗罪において、数十点におよぶ被害金品の所有者の氏名をも
れなく判決に明示し、かつ、これが証拠を挙示することは判決の要件ではないので
あるから、この点を以て、原判決に違法ありということはできない。また、私人の
提出した盗難被害届はたとえその作成者の捺印栂印がなくとも、裁判所においてそ
の書類が真正に成立したものであるとの心証を得た以上これを犯罪の証拠とするこ
とは、すこしもさしつかえないのであるから、論旨はすべて理由がない。
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よつて本件上告は理由のないものと認め、刑事訴訟法第四百四十六条に従い主文
のとおり判決する。
右は裁判官全員一致の意見である。
検察官 福尾彌太郎関与
昭和二三年六月二六日
最高裁判所第二小法廷
裁判長裁判官 塚 崎 直 義
裁判官 霜 山 精 一
裁判官 栗 山 茂
裁判官 小 谷 勝 重
裁判官 藤 田 八 郎
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