大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和23(れ)590 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人津川友一提出上告趣意第一点について。

記録を査閲するに、原審の昭和二十三年三月二十九日の被告人に対する公判期日

召喚状に対する、昭和二十三年一月八日付東京地方裁判所執行吏の同送達報告書(

所論勾留更新決定の送達報告書なる如く記載あるは誤りと認む)記載の事件番号は

昭和二十三年(を)第二〇三号とあり、従つて原審の事件番号たる昭和二十三年(

を)第二〇二号とは異号の記入がなされてあることは論旨指摘のとおりである。而

して該送達報告書は執行吏の作成すべき書類であるが、抑々送達報告書に事件番号

を記載せねばならぬ何等の根拠はなく、従つて他の記載事項に依つて事件の同一性

を認識し得る限り素より適法の送達報告書なること論を俟たない所である。

論旨は全く理由がない。

同第二点について。

公判請求書は所論の如き記載であることはその指摘のとおりである。而して論旨

の謂わんとする所は、本件五名の被害者中Aを欺罔したる分の自転車の所有者は、

AにあらざるBであつて、然かも公判請求書には「同人等所有の」とあるのは即ち

このBを欺罔したる詐欺事件の公判請求であると解すべきであるのに、原審は之に

対する判決を為さゞる違法(刑訴第四一〇条第一八号前段)ありと謂うに存するよ

うである。しかし詐欺罪は所有を冒すを必要とするものではなく所持を冒すを以つ

て足るものと解すべきであり、従つて検事は所論自転車をAの所有と誤認し(或は

誤記し)以つて所有関係をも便宜説明するため公判請求書に此旨の記載(即ち同人

等の所有との記載)を為したるものと解するを至当と謂わねばならぬ。蓋し前示の

如く詐欺罪の成立にはその被害物件の所有権の被害者又は第三者の何人に属するや

- 1 -

は犯罪の成否に関する所でないから、当該公判請求は所有者たるBを欺罔したとい

う事実を起訴したものにあらずして、依然Aを欺罔したる詐欺事実を起訴したもの

と解すべきことは本件一件記録上極めて明確であるからである。而して本件に於い

て第一審判決は原審判決と同一事実を認定してみるものであるが、昭和二十三年三

月二十九日の原審(第二審)第一回公判に於いて検事は「原審判決摘示ノ事実ニ基

キ公訴事実ヲ陳述シタリ」との公判調書の記載あり、原審は前示の如く第一審判決

の認定事実と同一事実を認定判決したるものであるから、以上如何なる点から看て

も原判決には所論の如き刑訴第四一〇条第一八号前段に所謂審判の請求を受けたる

事件に付き判決を為さゞる等の違法は毫も存在しないのである。

論旨は理由がない。

同第三点について。

しかし所論自転車は被告人が本件詐欺事件の犯行に供し又は供せんとしたもので

はなく、却つて本件詐欺事件の被害物件そのものであり、且つ被告人以外の者に属

する所であり、更に没収刑は必らず之を科することを要するものではないのである

から論旨は理由がない。

以上の理由に依り、刑事訴訟法第四百四十六条に従い主文のとおり判決する。

此判決は裁判官全員一致の意見に依るものである。

検察官 十蔵寺宗雄関与

昭和二三年一〇月九日

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 塚 崎 直 義

裁判官 霜 山 精 一

裁判官 栗 山 茂

裁判官 小 谷 勝 重

- 2 -

裁判官 藤 田 八 郎

- 3 -

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!