最高裁判所第二小法廷 昭和23(れ)635 判決
主 文
本件上告を棄却する
理 由
被告人の上告趣意について。
しかし憲法第二五条第一項はすべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営
み得るよう国政を運営すべきことを国家の責務として宣言したものであつて、この
規定により直接に個々の国民は国家に対して具体的現実的にかゝる生活権を有する
ものではない。従つてかりに最低限度の生活すら営み得ないで罪を犯したとしても、
その行為が同規定あるによつて正当化され或は実刑を免れるわけのものではない。
事実審裁判所は、同規定にかゝわることなく、諸般の事情を考慮して犯罪の成否、
実刑を科すべきか否かを決すべきものであつて、これらは悉くその裁量判定に委せ
られたことである。かゝる見解は既に当裁判所の判例とするところである(昭和二
二年(れ)第二〇五号同二三年九月二九日大法廷判決)。故に所論の中本件犯罪は
被告人の最低限度の生活すら営み得なかつたことに起因したものであるから刑の執
行猶予を相当とするに拘わらず敢えて実刑を科した原判決に右憲法の規定に違反す
と主張する点は結局原審の専権に基く裁量を攻撃するに帰するから固より上告適法
の理由とならない。
なお被告人に実刑を科するため、その家族が生活困難に陥るとしてもその判決は
憲法第二五条に違反するものでないことは先きに当裁判所の判例として示したとこ
ろであるから、(昭和二二年(れ)第一〇五号同二三年四月七日大法廷判決)服役
後の家族の生活困難を理由として原判決の憲法違反を主張する所論も理由がない。
よつて刑事訴訟法第四四六条に従ひ主文の如く判決する。
この判決は裁判官全員の一致した意見である。
検察官 福尾彌太郎関与
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昭和二三年一〇月一六日
最高裁判所第二小法廷
裁判長裁判官 塚 崎 直 義
裁判官 霜 山 精 一
裁判官 栗 山 茂
裁判官 藤 田 八 郎
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