最高裁判所第二小法廷 昭和25(れ)995 判決
主 文
本件上告を棄却する。
理 由
弁護人今西貞夫上告趣意第一点について。
所論の、原判決挙示の証拠である被告人に対する検察事務官の聴取書中の供述記
載によれば、被告人は相手方(A)を切る気にはなれなかつたが、相手方が飛びか
ゝつて来た際逃げようと思つて暫らく刀を振つたというのであるから、被告人に暴
行の故意のあつたことは十分に認められるところであつて、且つこの認定は何等実
験則に反するものではない。そして傷害の事実は原判決挙示の各証拠によつて明認
できるのである。しからば傷害罪は暴行の結果的加重犯であるから、被告人に傷害
罪の責任のあることは当然である。次に論旨後段の、被告人は自己に対する危害を
免れんため暴行したのであるから違法の認識を欠くものであるとの点については、
被告人の行為が正当防衛に該当する等の前提に立つならば格別であるが、原判決は
かゝる前提事実は認定していないところであつて、弁護人独自の主張たるに止まる
のである。要するに原判決には所論の違法はなく、論旨は理由がない。
同第二点について。
判決の証拠説明は、その証拠の内容を逐一写録するの要なきは勿論、これを摘録
することも亦必らずしも必要ではなく、その証拠の題目を掲げ趣旨を摘示する等、、
その証拠とする内容を認識し得る程度に挙示せられ、よつて如何なる事実がその証
拠により若しくは他の証拠と綜合して証明されるかゞ明らかなる程度に判示あれば
足るのである。そして所論指摘点の原判決の証拠説明は、右要件を充足しているこ
とはその判示自体に照し明らかであるから、少しも所論のような違法はない。論旨
理由なし。
よつて、刑訴施行法第二条旧刑訴四四六条に従い、主文のとおり判決する。
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この判決は全裁判官一致の意見である。
検察官 田中巳代治関与
昭和二五年一〇月六日
最高裁判所第二小法廷
裁判長裁判官 霜 山 精 一
裁判官 小 谷 勝 重
裁判官 藤 田 八 郎
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