大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和26(あ)4585 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人村井清造の上告趣意第一点について

所論中原判決が「二、原判決の認定を攻撃する論旨について」の項において説示

しているところは、その前段と後段の理由にくいちがいがあるとして判例違反、憲

法違反を主張するものであるが、原判決判示の趣旨は被害者が爾後においても別段

身体の機能障害の認むべきものを残さなかつた事実と、被告人が警察以来殺意を否

認するとともにアスピリンに睡眠薬を混じて呑ませたに過ぎないとの陳述とを照ら

し合はせ、原審が認定した毒物について疑いがあつたので事実審理を開始し、更ら

に鑑定せしめた結果被害者が服用した薬品は、原審の認定した「アコニチンを主剤

とする劇毒物」でなく、市販にかゝる「ヂバ―ル二十錠」と認定し、一審判決はこ

の点において罪となる事実の一部即ち犯罪手段の重要な要素を誤認したもので、刑

の量定に影響すべき事実誤認の違法があると判示しているのであつて、右判示の前

後を綜合すれば被告人の殺意の有無に関する原審の認定に誤りがあるとの趣旨でな

いことは明らかであるから、この間毫も所論のような理由のくいちがいはないので

ある。従つてこれを前提とする違憲の主張はその前提を欠くものである。また判例

違反の主張は判例を具体的に示さないのであるから論旨はいずれも採用することが

できない。その余の論旨中原審が採用した証拠につき、その証拠力又は証拠能力の

ないことを主張し判例違反を主張する部分については、引用の判例はいずれも本件

に適切でない。(原判決の採用した第一審の証人の証言中伝聞に属する部分を除外

していることは原審が引用した第一審判決の証拠説明によつて明らかである)所論

は帰するところ独自の見解のもとに原審の裁量に属する証拠の取捨を非難するもの

であつて上告適法の理由とならない。また本件起訴状が刑訴法の要件を具備しない

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ものであるとして、判例違反を主張する論旨については、判例を具体的に示さない

ばかりでなく、起訴状に所論のような違法の存しないことはその記載に徴して明ら

かである。

同第三点について(二点欠)

所論は多岐にわたり、原判決が違法であると主張しているのであるが、帰すると

ころ独自の見解に立つて原審の裁量に委ねられている証拠の取捨判断、事実の認定

及び法令の違反を主張するものであり上告適法の理由にあたらない。また大審院判

例に違反するとの主張については原判決が所論の判例に反する判断を示していると

は認められない。

同第四点(追加上告趣意書(一)(二))について

所論は結局事実誤認と、単なる訴訟法違反の主張に過ぎないから上告適法の理由

とならない。

弁護人荒谷昇の上告趣意第一点、第二点について

所論は訴訟手続の違反を理由とする訴訟法違反の主張であつて適法な上告理由と

ならない。

同第三点について

所論は原審の裁量に属する証拠の取捨選択を非難するに帰し上告適法の理由とな

らない。

同第四点について

所論は単なる訴訟法違反の主張であつて上告適法の理由とならない。(原判決は

証人Aの供述と同人の鑑定書を除きすべて第一審判決挙示の証拠を引用したもので

あるから証拠の標目を含む趣旨であることは当然である)。

同第五点について

所論は単なる法令違反の主張であつて上告適法の理由とならない。(所論のよう

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な場合に被告人に訴訟費用の負担を命じても違法でないことは昭和二五年(あ)第

一五九一号同二六年三月八日第一小法廷判決の示すところである)。

同第六点について

所論は結局事実誤認の主張の域を出でず上告適法の理由にあたらない。

また記録を精査しても、刑訴四一一条を適用すベきものとは認められない。

よつて刑訴四〇八条により主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員一致の意見である。

昭和二八年七月三日

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 霜 山 精 一

裁判官 栗 山 茂

裁判官 小 谷 勝 重

裁判官 藤 田 八 郎

裁判官 谷 村 唯 一 郎

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