大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和26(オ)509 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人弁護士林徹上告理由第一点について。

論旨は、自作農創設特別措置法による農地の買収についても民法一七七条の適用

があり、訴外Dから被上告人に対する本件農地の所有権の移転は、上告人に対抗す

ることができず、従つて、右Dを所有者として定めた本件農地の買収計画は正当で

あり、これを是認した上告人の本件訴願裁決も違法ではないと主張するに帰する。

しかしながら、同法による農地の買収について民法一七七条の適用のないものと

解すべきことは、さきに当裁判所の判示するところであつて、(昭和二五年(オ)

第四一六号、同二八年二月一八日大法廷判決参照)論旨は採用することができない。

なお論旨は、(四)において、昭和二一年法律四二号農地調整法改正法附則二項

を引用すれるけれども、同項は、右改正前の所有権移転につき登記、又は引渡のい

ずれもが完了していない場合は、改正法の四条を適用する趣旨の規定であり、換言

すれば、登記を完了しておれば、その登記の効力を認めることにはなるけれども、

この規定を根拠として、移転登記のない場合に、民法一七七条の適用があるものと

推論することはできない。更に論旨の引用する昭和二二年法律二四〇号附則二条は、

前記附則二項と同趣旨の規定であるが、採草地、放牧地に関する規定であるから本

件と全く関係がない。

更に論旨は(六)において自作農創設特別措置法一一条を引用するけれども、同

条は買収手続中の権利移転に関する規定であつて本件とは全く関係がない。又論旨

は、同条及六条を引用して買収計画において農地の所有者を定めることはその要件

でないと主張するのであるが、何人が農地所有者であるかによつてその農地を買収

- 1 -

し得るかどうかが定まることは、同法三条一項により明かであるから、所有者を誤

つて定めた買収計画を違法とすべきは当然であつて、論旨は理由がない。

論旨は(七)において大審院の判決を引用するけれども、当時の大審院は行政処

分の取消変更を求める訴について裁判権を持たなかつたのみならず、いずれの場合

も本件と場合を異にし本件の先例となるものではない。

同第二点について。

論旨はDの離縁は昭和二〇年一二月二八日の届出によつて効力を生じたのである

から、その後において本件農地の被上告人に対する贈与も行われたものと主張する

のであるが、贈与が離縁の効力発生後でなければならない理由はなく、原判決は昭

和一八年七月被上告人がEの事実上の養子となり同時にDは離縁となり、D名義の

本件農地が被上告人に贈与されたものと認定しているのであるから、論旨は原判決

の事実認定を非難するか或は原判決の認定と異る事実を前提とする主張であつて、

到底採用することができない。

以上説明のとおり論旨はすべて理由がないから、本件上告を棄却することとし民

訴四〇一条、九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。

この判決は裁判官霜山精一の少数意見を除き、裁判官全員一致の意見によるもの

である。(右少数意見は第一点記載大法廷判決所掲同裁判官の少数意見のとおりで

ある。)

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 霜 山 精 一

裁判官 栗 山 茂

裁判官 小 谷 勝 重

裁判官 藤 田 八 郎

裁判官 谷 村 唯 一 郎

- 2 -

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!