大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和28(あ)4601 決定

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人伊藤静男の上告趣意について。

所論は憲法三九条同三一条違反を主張するけれども、その実質は単なる法令違反

を理由とする主張であつて、刑訴四〇五条の適法な上告理由に当らない。

のみならず、第一審判決挙示の証拠によると、被告人の共犯者であるAは、B製

鋼所指定のスクラツプ納入業者であるC物産株式会社の代行商人として、本件のス

クラツプを同製鋼所D製鋼工場に納入せんとしたものであり、その代金は大阪市に

在るC物産を介して右製鋼所E営業所から支払われそれを受領すべき関係にあつた

ことが認められるのである(第一審判決挙示証拠、特にFの検察事務官に対する供

述調書謄本参照)。すなわち、本件仮装量目に相当する代金を交付する場所は呉市

ではなくして大阪市ではあるが、その代金の交付者は矢張り同製鋼所なのである。

従つて、被告人等は同製鋼所D製鋼工場の係員を欺罔することにより、結局同製鋼

所E営業所の係員をも欺罔して金員の交付を受けんとしたわけになるのである(納

入領収書は五通作られ、その内一通を納入者に渡し、他はE営業所に送られる。前

示F供述調書謄本)。されば第一審認定のような被告人等の行為は、同製鋼所E営

業所に向けられる一連の欺罔行為の実行に着手したものと認むべきこと勿論という

べきである。以上の関係につき原判示は不親切と不精確のそしりを免れないが結論

は正当であつて、何等所論のような違法は存しない。

なお本件につき刑訴四一一条を適用すべき事由は認められない。

よつて同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとお

り決定する。

昭和三〇年一二月一四日

- 1 -

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 栗 山 茂

裁判官 小 谷 勝 重

裁判官 藤 田 八 郎

裁判官 谷 村 唯 一 郎

裁判官 池 田 克

- 2 -

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!