最高裁判所第二小法廷 昭和29(あ)1298 決定
主 文
本件上告を棄却する。
理 由
弁護人内水主一の上告趣意第一点について。
所論は、本件起訴状記載の訴因たる犯罪事実の記載が、明瞭でないと主張し、大
審院判例を引用して起訴を無効であるとし、本件起訴を有効と前提した原判決の判
例違反を主張する。そして、論旨が右明瞭でないと主張する点は、(イ)被告人が
「女給の募集周旋方を依頼し」たAが「被告人の被用者」であるか、「被用者以外
の者」であるか識別できない、(ロ)「被告人経営に係る特殊カフエーに働く女給
の募集周旋方を依頼し、労働者の募集を行わせ」との公訴事実中、「周旋」の意義
が明らかでない、との二点に帰着する。しかし、右(イ)の点については、原判決
は、「本件公訴事実中、被告人が……労働者を募集するについて、被用者でないA
に労働大臣の許可を受けないで募集を委託して労働者を募集し、且つこれに報償金
を与えたとの点は……別罪を構成しないものと認めるので、この点については被告
人は無罪……」と判示しているのであるから、この点に関する論旨は上告論旨とし
て不適法のものである。また(ロ)の点については、公訴事実は、原判決が自判判
示しているとおり、被告人がAに対し「……Aをして……に対し右女給となること
を勧誘させてこれを募集させた」趣旨と解し得られるから、所論のように、起訴事
実が、他の犯罪事実と識別し得ないもの、または犯罪の内容を知り得ないという程、
表示が不明瞭なものということはできない。それ故、所論判例違反の主張は前提を
欠き、上告適法の理由とならない。
同第二点について。
所論は、原判決が、被告人と、その経営する特殊カフエーの女給との関係を、支
配的従属関係にあるもので、請負契約ではなく雇傭契約であるとした判断の不当を
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主張する。単なる法令違反の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
そして職業安定法五条にいわゆる「雇用関係」とは、必ずしも厳格に民法六二三条
の意義に解すべきものではなく、広く社会通念上被用者が有形無形の経済的利益を
得て一定の条件の下に、使用者に対し、肉体的精神的労務を供給する関係にあれば
足りるものと解するのが、当裁判所の判例とするところであるから(昭和二七年(
あ)第三六二六号、同二九年三月一一日第一小法廷判決、集八巻三号二四〇頁参照)
原判決の認定判断は、右判例の趣旨に照して正当である。
同第三点について。
所論は、本件女給の義務は、職業安定法六三条二号にいう、公衆衛生上有害な業
務ではないと主張し、原判決の認定を非難する。所論は単なる事実誤認の主張か、
単なる法令違反の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。のみならず
原判決のこの点に関する判断は正当であるから、所論は実質においても理由がない。
よつて同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとお
り決定する。
昭和三一年三月二三日
最高裁判所第二小法廷
裁判長裁判官 小 谷 勝 重
裁判官 藤 田 八 郎
裁判官 谷 村 唯 一 郎
裁判官 池 田 克
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