大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和29(あ)1895 判決

主 文

原判決中被告人に関する部分を破棄する。

被告人を懲役六月に処する。

第一審における訴訟費用中、証人A、同Bに支給した分は、被告人と原

審相被上告人Cとの連帯負担とし、証人Dに支給した分は被告人の負担とする。

本件公訴事実中、被告人は昭和二八年六月一三日熊本県阿蘇郡a村大字

b所在被告人居宅において業務その他正当の事由なくして刃渡一二糎の匕首を携帯

していたものである旨の事実については、被上告人は無罪。

理 由

弁護人大竹武七郎、同打出信行の上告趣意は、末尾添付の別紙書面記載のとおり

である。

同上告趣意第一点について、原判決の引用する第一審判決判示第二の事実は、被

告人は昭和二八年六月一三日熊本県阿蘇郡a村大字b所在の被告人居宅で業務その

他正当の事由なくして刃渡一二糎の匕首を所持していたものである、というのであ

るが、原判決は第一審判決を破棄自判するに当り、右匕首所持の事実につき銃砲刀

剣類等所持取締令一五条(昭和三〇年法律第五一号による改正前の規定)を適用し

ているのであつて、同条は「刃渡一五センチメートル未満の匕首又はこれに類似す

る刃物は、業務その他正当な理由による場合を除く外携帯することができない」と

規定するものであり、なお右改正前の同令第二条の規定によれば、所持禁止は刃渡

一五糎以上の匕首に限られていたのであるから、判示事実と適用罰条とを対照すれ

ば、判示事実中所持とあるのは携帯の明らかな誤記と解することができる(若し判

示事実は、起訴状に携帯の事実を明示してあるにかかわらず、故らに携帯に当らな

い所持の事実を認定して有罪とした趣旨であるとすれば、この点において原判決は

罪とならない事実を認定して有罪とした違法があることになる)。

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しかし更に、右第一審判決判示第二の事実自体が匕首を携帯したものに当るかど

うかについては、検討を要する。右事実は、その判示第一の(二)の事実、すなわ

ち被告人は同日被告人居宅においてBに対し匕首を擬して「わりや突殺してやる」

と申向け、原審相被告人Cは「自分の悪いことが判つたら詫状を書け」と申向け、

若しBにおいてこれを肯じなければ如何なる危害を加えられるやも知れない様な気

勢を示して、同人を脅迫したものであるとの事実の判示に続いて、右の「日時場所

で業務その他正当の事由なくして刃渡一二糎の匕首を携帯していたものである」と

認定しているのであるから、被告人がその居宅で所持することを許されている匕首

を、その居宅内で犯行の用に供するために被告人が手にしたことをもつて、携帯と

いう禁止行為に当るものと認めた趣旨と解する外はない。しかし前掲法条において

所持と携帯とを区別し、前者を許容し後者を禁止している法意に徴すれば、このよ

うな把持は所持に包含される行為の一態様として禁止行為に当らず、罪とならない

ものと解するのが相当であつて、これを有罪とした原判決には法令の解釈適用を誤

つた違法があるものといわなければならない。よつて他の第一点の論旨につき判断

するまでもなく、右違法は原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとして、

刑訴四一一条一号により原判決を破棄すべきものである。

同上告趣意第二点について、

所論は原判決には本件屠場法違反の事実につき被告人の自白のみによつて共謀の

点を認定した違法があり、憲法三八条三項に違反すると主張する。しかし自白に対

する補強証拠は必ずしも自白にかかる犯罪事実の全部にわたる必要はなく、自白に

かかる事実の真実であることを証するものであれば足りると解すべきことは、当裁

判所判例が屡々所論違憲の規定の解釈として判示した趣旨により明らかであつて、

所論違憲の主張は理由がない。

前述の理由により原判決中被告人に関する部分を破棄すべきものであるから、刑

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訴四一三条但書により本件について更に判決する。

原判決の引用する第一審判決認定の被告人にかかる犯罪事実(判示第二の匕首所

持の事実を除く)に法令を適用すると、被告人の判示所為中傷害の点は刑法六〇条、

二〇四条、罰金等臨時措置法三条、二条に、脅迫の点は刑法六〇条、二二二条一項、

罰金等臨時措置法三条、二条一項に、獣畜不法屠殺解体の点は刑法六〇条、昭和二

八年法律第一一四号と畜場法附則五項、屠場法三条、一三条、罰金等臨時措置法二

条一項に該当するので、各罪につき所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前

段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により最も重い傷害罪の刑に法定

の加重をした刑期の範囲内で、被告人を懲役六月に処すべきものとし、訴訟費用の

負担については刑訴一八一条一項本文、一八二条により主文第三項のとおり定め、

なお本件公訴事実中主文第四項掲記の事実については、他の公訴事実と併合罪の関

係にあるものとして起訴されたものと認められるから、前述の理由により無罪の言

渡をなすべきものである。

よつて裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

本件公判には検察官長部謹吾が出席した。

昭和三一年一二月二八日

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 小 谷 勝 重

裁判官 藤 田 八 郎

裁判官 池 田 克

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