大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和30(オ)263 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人岡村玄治の上告理由第一ないし第四点について。

論旨を通じて主眼とするところは、要するに、本件賃貸借には賃借人において無

断で模様替をしない旨の特約があるにもかかわらず、被上告人がパチンコ遊戯場経

営のため本件建物を改装するにあたり、上告人の承諾なくして施した模様替は、右

特約違反であり上告人の信頼を裏切ること甚しい不法行為であつて、本件賃貸借の

継続に支障を及ぼすものであるにかかわらず、原審のごとく判断するときは、右特

約も借家法六条によつて存在しないものとみなされ、右のごとき不法行為も許され

ることとなる不都合を生ずるというに帰着する。しかし、原判決は、所論のように

本件特約の効力につき借家法の規定を援用しているように解される疑がないでもな

いが、その趣旨とするところは、本件特約それ自体をもつて右借家法の規定に反す

るとしたものではなく、本件のごとき建物の賃貸借における信頼関係も、結局は、

信義則による衡平の観念によつて制約を受けるものであることを判示するにあつた

ものと解し得られ、原審認定の一切の事実関係を参酌すれば、原審が、本件模様替

の程度では建物の保存上さしたる影響がなく未だ本件賃貸借契約の継続に支障を及

ぼすとは認められず、従つて、本件特約違反を理由とする上告人の主張も理由がな

いとしたことは相当として首肯することができるものといわなければならない。論

旨中には、なお、(一)本件模様替は、少くとも本件賃貸借の解約の申入れをなす

につき借家法一条ノ二にいわゆる正当の事由となること疑なきにかかわらず、これ

を無視して上告人の請求を排斥した原判決は違法であると主張し、(二)被上告人

の本件パチンコ遊戯場の開設又は増設にあたり所轄当局が現地を検分してこれを許

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可した事実及び本件建物が被上告人の順次修理増改築したもので全体として極めて

不整形のものである事実はいずれも本件に関係がないにかかわらず、これを判断の

資料に加えた原判決は違法であると主張する点もあるけれども、右(一)は原審で

主張のないところであり、(二)は本件のような事実関係の下においては、原審の

判断が違法であるとすることはできない。されば論旨は、すべて採用し難い。

同第五点について。

被上告人がDに本件建物の一部を転貸したものとは認めることができないとして

上告人の主張を排斥した原判示は正当である。なお、上告人は借家法一条ノ二によ

る解約申入れを主張していないことは、前説示のとおりである。

よつて、民訴三九六条、三八四条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、

主文のとおり判決する。

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 小 谷 勝 重

裁判官 藤 田 八 郎

裁判官 池 田 克

裁判官谷村唯一郎は退官につき署名押印することができない。

裁判長裁判官 小 谷 勝 重

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