大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和30(オ)609 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人加藤定蔵の上告理由第一点について。

論旨は、被上告人側に所論の事情ある以上、民法第一一〇条の要件が満されてい

るという。

しかし、同条の適用は、何らかの代理権ある者がその権限を踰越してなした行為

について論ぜられるべきもので、全然代理権のない者のなした行為には同条の適用

がないと解せられるところ、上告人の主張にかかる被上告人が常時その印鑑を訴外

Dに委し印鑑証明書の下付を代理させていたとの事実は、原審の肯認しなかつたと

ころであつて、かえつて、原審は、訴外人が被上告人の承諾を得ることなく被上告

人の印鑑を利用して印鑑証明書の下付を受けた事実を認定したものであること判文

上明らかであり、かつ、この認定は原判決挙示の証拠によつて首肯しうる。従つて、

訴外Dには全然代理権がなかつたものとして、この場合民法第一一〇条の適用を否

定した原審の判断に違法はなく、論旨は採用しえない。

同第二点について。

論旨は、所論の各事情ある以上、被七告人において訴外Dの行為を追認したもの

とすべきであると主張する。

しかし、原審の挙示する第一審および原審における被上告人本人訊問の結果によ

れば被上告人が本件不動産の競売開始決定を受けて驚愕し、その善後策に奔走した

経緯に関する原判決認定の経過を肯認することができる一方、所論引用の各供述か

ら必ずしも所論のように認定せねばならぬものとも言えないから、前記認定に添つ

て追認の抗弁を排斥した原審判決を攻撃する所論は、結局原審がその専権にもとず

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いてなした証拠の取捨・事実の認定を争うに帰着する。所論は採用しえない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

おり判決する。

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 小 谷 勝 重

裁判官 藤 田 八 郎

裁判官 池 田 克

裁判官 河 村 大 助

裁判官 奥 野 健 一

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