大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和31(あ)1728 判決

主 文

原判決を破棄する。

本件を札幌高等裁判所に差し戻す。

理 由

弁護人大沢一六の上告趣意は別紙書面記載のとおりである。

職権により調査すると、原判決が支持した第一審判決認定の事実中、被告人が北

海道根室支庁拓殖課長として開拓財産である立木の売払に関し正式売払の公達前、

判示のごとき便宜措置をとることを諒承したこと、第一審相被告人Aにおいてその

立木代金合計五三万八〇〇〇円をその認定の日時各払下申請者から受領し且つ同人

においてこれを正式売払の納期の到来をまつて支払に充てるべく各支払者のために

保管していたこと、右保管は被告人の指示によるものであること、及びAはこれを

判示のごとくBに対し計一〇万円、Cに対し計五万円をそれぞれ貸与したことは、

いずれも挙示の証拠によつて優に認めることができる。しかしながらAがら判示の

金員をB及びCに貸与したのは被告人との共謀に基くものであるとの点並びに被告

人が判示日時計一八万円をAから受領して着服したとの点に関しては、第一審判決

が証拠としたAの副検事に対する昭和二七午五月一二日附供述調書及び同人の副検

事に対する同年同月一五日附供述調書のほかこれを認めるべき証拠は存在しない。

ところで被告人が立木の売払につき便宜措置をとることを諒承していたこと、Aに

立木代金を受領させこれを保管させていたことは、当然にAとの共謀による横領行

為を意味するものでないこと固よりであるが、右Aの副検事に対する昭和二七年五

月一二日附供述調書によれば、Aは本件起訴の対象となつているB、Cに対する金

員の貸与のほかにも数名の者に対して小口の金融をしているのであり、これらの金

員の貸与につきいちいち被告人と相談していたものとは記録上到底認められず、ま

たB、Cに関する部分につき特に被告人と共謀があつたという具体的事実を認める

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には未だ十分とはいい難い。また、Aの供述は被告人の供述と著しく相異している

上、本件審理の過程における相被告人としての供述並びに証人としての供述を通じ

てこれをみるとその重要部分について変転していて容易に捕捉し難いものがあり、

且つ、第一審判決が証拠とした証人Dの差戻前の第一審第二回及び第七回公判期日

における各供述を通じ、本件捜査の段階においてAや被告人が当時根室支庁拓殖庶

務係長であつたDに偽りの供述工作をしたことに関し、同人の供述として、Aの面

前で被告人からAを助けねばならねから頼むとの言辞をもつて懇願された旨を述べ

ている点等を併せ考えれば、第一審判決が証拠とした前示副検事に対するAの各供

述調書は全面的には信を措きえないものがあるといわなければならない。しかるに、

前示各供述調書を全面的に措信すべきものとの前提に立つて、本件起訴にかかる横

領金額のすべてにつき被告人にAとの共謀による横領の事実を認定した第一審判決

を支持した原判決は、判決に影響を及ぼすべき事実誤認の疑いがあつて、これを破

棄しなければ著しく正義に反するものといわなければならない。よつて刑訴四一一

条三号、四一三条により原判決を破棄し、本件を原裁判所である札幌高等裁判所に

差し戻すべきものとし、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

検察官 中村哲夫出席

昭和三四年八月二八日

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 小 谷 勝 重

裁判官 藤 田 八 郎

裁判官 池 田 克

裁判官 河 村 大 助

裁判官 奥 野 健 一

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