大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和31(あ)2842 判決

主 文

原判決を破棄する。

本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。

理 由

弁護人青柳虎之助の上告趣意、同増田道義の上告趣意は、別紙書面記載のとおり

である。

職権により調査すると、昭和二九年三月八日本件の店舗を含む家屋全部の貸主で

ある被告人Aと借主であるBとの間に「家屋賃貸借契約に附帯する覚書」(証二号)

が取り交わされ、特に賃貸家屋の一部又は全部の転貸禁止、賃借人個人の経営事業

以外の用途への使用の禁止等が確約せられたにもかかわらず、賃借人Bは貸主であ

る被告人Aに無断でその頃自己が監査役をしているC商事株式会社(社長D)に店

舗事務室を使用させようとするにいたつたので、同被告人はその非を責めB及び仲

裁人Eと交渉の末、昭和二九年六月一〇口Bにおいて同日限り右店舗事務室をAに

明渡し返還した(証四号の「店舗明渡しに関する誓約書」参照)。一方、同年七月

一日貸主A(甲)とC商事代表取締役D(乙)その連帯保証人E(丙)との間に、

「搬人物件撤去に関する契約書](証五号)なるものが取り交わされ、これによる

と、甲は本件家屋を従来Bに賃貸中のところその店舗の部分は昭和二九年六月一〇

日限り明渡させたのであるが、その交渉中に乙が甲に無断で移転準備をし店舗の使

用を強請したので、甲はその不法を責めこれを拒絶したのであるが、乙は丙を通じ

て再三に及び実情を具申して懇請したので、甲は自己の使用を一時的に延期し昭和

二九年七月末日まで搬入物件の撤去を猶予する。右期日にいたるも乙がその所有物

件一切を他に移転して右店舗事務室を甲に返還しないときは、何等の催告を要せず

乙の所有物件を撤去せしめる。なお残存物件は甲において適当に処置するも乙は何

等異議なき旨を約したことがわかる。そして右契約書に原審における被告人A、同

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Gの各供述並びに一審証人Hの証言を併せ考えれば、右期日を経過した同年八月一

日被告人A、その息子である被告人G、その娘婿である被告人Iが現場に臨み、本

件店舗の明渡の猶予につき終始Dに代つて被告人側と交渉してきたEに対し、店舗

の明渡を求めたところ、同人は初めはDの不在を理由に明渡の猶予を請うていたけ

れども、前掲折衝の経緯にかんがみ事態やむをえないものとして敢て明渡拒絶の態

度に出でなかつたので、被告人側の手で会社の什器類の一部を横の通路に出し、被

告人側の商品を搬入したことが認められ、またその間被告人らが特に威力を用いた

形跡も認められない。このような事実関係の下においては、被告人らは右明渡につ

き会社側の同意(少くとも黙示的同意)があつたものと信じて行動したものと認め

ることもでき、そうとすれば自己の商品の保管並びに残存する会社側の什器類を保

管するためにも、店舗に施錠し会社側の申出により随時その鍵を使用させる方法を

とることは強いて異とするに足りない。しかるに、原審が右店舗の明渡は正当に行

われなかつたことを前提としてたやすく被告人等の本件所為を威力による業務妨害

行為であると断定したのは、判決に影響を及ぼすべき事実誤認の疑いがあつてこれ

を破棄しなければ著しく正義に反するものといわなければならない。よつてその余

の上告趣意に対する判断をするまでもなく、刑訴四一一条三号四一三条により原判

決を破棄し、本件を原裁判所である名古屋高等裁判所に差し戻すべきものとし、裁

判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

検察官 上田次郎出席

昭和三四年五月二二日

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 小 谷 勝 重

裁判官 藤 田 八 郎

裁判官 河 村 大 助

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裁判官 奥 野 健 一

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