最高裁判所第二小法廷 昭和31(オ)172 判決
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
理 由
上告代理人江見盛秀の上告理由第一点および第二点について。
原判決の挙示する証拠によれば、本件弁償契約の当時、本件(A)の土地が実質
上上告人A1の所有であつたとの原審の認定は首肯することができ、また右のよう
に、登記簿の記載と異る権利関係の存在が適法に認定されている本件においては、
登記簿の記載によつて右の土地が上告人A2の所有に属するものと認め得ないとし
た点も首肯することができる。されば、所論は、憲法その他の法令の違背に名を籍
りて、単に原審が適法になした証拠の取捨判断ならびに事実認定を非難するに帰し、
採るを得ない。
同第三点について。
登記の存在は、実体上の物権変動を第三者に対して主張する要件であるにすぎず、
第三者において、登記名義を有しない者に物権の帰属することを認め、登記名義人
に対し登記簿の記載にそう物権の帰属を否認することを妨げるものではないと解す
べきである。したがつて、本件の場合、前記土地について、登記名義を有しない上
告人A1がその所有者であり、被上告人は同人からその所有権を譲受取得した旨判
示し、被上告人の、単なる登記名義人にすぎない上告人A2に対する移転登記手続
の請求を認容すべきものとした原審の判断は正当であり、所論は、憲法その他の法
令の違背に名を籍りて独自の法解釈を主張するに帰し、採るを得ない。
同第四点および第五点について。
所論合意解除および強迫を理由とする取消の抗弁については、原審は、上告人A
1の本人尋問の結果を措信できないとして排斥し、その他に右事実を認めるに足る
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証拠がないとしたのであり、右証拠の取捨判断に違法は認められない。所論は、独
自の証拠判断と原審の認定にそわない事実を主張し、原審の証拠の取捨判断を非難
するに帰し、採るを得ない。
同第六点および第七点について。
登記の記載が実体上の権利変動を如実に表示していなくても、それが結論におい
て現在の権利状態と符合している限り有効であり、本件の場合、未登記不動産の譲
受人である被上告人が譲渡人から所有権移転登記を受けるかわりに直接自己名義に
なした所有権保存登記は有効と解すべきである。したがつて、かゝる登記は不実の
登記であるから無効であるとの主張は、それ自体失当であることに帰するのである
が、原審が叙上の趣旨で上告人A1の所有権保存登記抹消手続を求める反訴請求を
排斥すべき旨判断したものであることは、その判文から窺うことができるから、原
判決に所論のような判断遺脱の違法はない。
同第八点について。
原審において、上告人等は、本件請求の基礎となつた弁償契約の内容を、代物弁
済に関する点の自白の取消を主張するほか全面的に認めているのであるから、むし
ろ上告人らは所論の主張をしなかつたものと解するのが相当であり、仮に右主張が
なされたとしても、それは単に右契約に基く債務の範囲数額を争うにほかならない
のであるから、原審が被上告人の主張のとおり右契約に基く債務全部の存在を肯定
した以上、結局右の主張を排斥したことに帰するわけであり、いずれにしても原判
決に所論のような判断遺脱の違法があるとはいえない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
最高裁判所第二小法廷
裁判長裁判官 小 谷 勝 重
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裁判官 藤 田 八 郎
裁判官 河 村 大 助
裁判官 奥 野 健 一
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