大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和32(あ)324 判決

主 文

本件各上告を棄却する。

理 由

被告人Aの弁護人井上太郎の上告趣意第一点について。

被告人Aの第一審判決判示第一の(一)の(1)、(3)、(三)の(1)の各

所為は、窃盗のいわゆる共謀共同正犯にあたる旨の原判示が、憲法三一条に違反す

るものでないことは、当裁判所大法廷判例(「いわゆる共謀共同正犯成立に必要な

共謀に参加した事実が認められる以上、直接実行行為に関与しない者でも、他人の

行為をいわば自己の手段として犯罪を行つたという意味において、共同正犯の刑責

を負うもので、かく解することは憲法第三一条に違反しない。」昭和二九年(あ)

一〇五六号同三三年五月二八日大法廷判決、集一二巻八号一七一八頁)の趣旨に照

らし明らかであるから、所論は採用できない。

同第二点について。

所論判例(「被告が窃盗罪の実行を謀議したる事実のみを掲げ、其の実行行為若

くは之に密接且必要なる行為に加担したる事実を明示せずして輙く窃盗の実行正犯

に問擬したる判決は、理由不備の違法あるものとす。」大正三年(れ)九三九号同

年六月一九日大審院第一刑事部判決、刑録二〇輯一二五八頁)は、当裁判所の判例

(「いわゆる共謀共同正犯が成立するには、二人以上の者が特定の犯罪を行うため、

共同意思の下に一体となつて互に他人の行為を利用し、各自の意思を実行に移すこ

とを内容とする謀議をなし、よつて犯罪を実行した事実が存しなければならない。」

前記の大法廷判決、同旨、昭和二三年(れ)二九六号同年一〇月六日大法廷判決、

集二巻一一号一二六七頁等。なお、昭和一〇年(れ)一七九一号同一一年五月二八

日大審院第一第二第三第四刑事聯合部判決も、「窃盗罪又は強盗罪に付て其の謀議

に与りたる者は、実行行為を分担せざるも共同正犯たる責を負ふべきものとす。」

- 1 -

としている。刑集一五巻七一五頁)に牴触する限り判例としての効力を失つたもの

と認められる。されば、原判決は、右当裁判所の判例の趣旨に反するところがない

から、所論はその前提を欠き上告適法の理由とならない。

同第三点について。

所論中判例違反をいう点は、引用の判例は、当該事案における量刑事由を判示し

ただけで、他の事案に適用すべき法律的見解を含んでいないのであるから判例違反

の対象となり得ない判例であり、その余の論旨は、量刑不当の主張であつて、刑訴

四〇五条の上告理由に当らない。

被告人岸原荘次の弁護人永田彦一郎の上告趣意は、量刑不当の主張に帰するもの

であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。また記録を調べても同四一一条を

適用すべきものとは認められない。

よつて同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

昭和三四年五月二二日

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 小 谷 勝 重

裁判官 河 村 大 助

裁判官 奥 野 健 一

- 2 -

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!