大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和32(テ)14 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人蝶野喜代松の上告理由第一点について。

諭旨は、原審が上告人の主張に対しなんら判断を与えていないと主張し、それを

前提として原判決が憲法三二条に違反するというのである。しかし原審が所論上告

理由に対しこれを採用できないものと判断して裁判していることは明らかであるか

ら、論旨違憲の主張はその前提を欠き採用できない。

同第二点について。

論旨は、調停調書にもとづく家屋明渡の執行力の排除を求める本件請求につき、

これを排斥すべきものとした二審判決を維持した原判決は、上告人の生活権を奪う

もので憲法二五条に違反するというのである。

しかし、憲法二五条は、個人が自由な意思にもとづいて締結した契約により家屋

明渡の債務を負担しその履行をしない場合に、裁判所がその履行としての家屋明渡

を命ずることを禁ずるものでないことは、当裁判所の判例とするところである(昭

和二三年(オ)第七六号、、同二五年四月一二日大法廷判決、民集四巻四号一三九

頁参照)。したがつて本件当事者間に成立した調停にもとづき、上告人が家屋明渡

の債務を負担するに至つた場合、その調停調書の執行力排除の請求を排斥しても、

憲法二五条に違反しないことは右判例の趣旨に徴し明らかであるから、所論は採る

を得ない。

同第三点について。

審級制度をいかにすべきかについて、憲法は八一条の規定以外なんら定めるとこ

ろがなく、同条所定の点以外の審級制度は法律の定めるところに委ねられていると

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解すべきであり、したがつて簡易裁判所を第一審とする民事事件の上告審を高等裁

判所とすることを定めた民訴三九三条および裁判所法一六条三号の規定が憲法三二

条、同七六条、同八一条のいずれにも違反するものでないことは、当裁判所の判例

とするところである(昭和二七年(テ)第六号、同二九年一〇月一三日大法廷判決、

民集八巻一〇号一八四六頁参照)。されば所論の採るを得ないことは右判例により

明らかである。

同第四点について。

論旨は、特別上告の適法要件の存否ならびに特別上告提起による強制執行停止の

許否を原審裁判所の判断に委ねる旨定めた所論の民訴法および民訴規則の規定の違

憲をいうのであるが、原審は本件特別上告を不適法であると判断したものではない

し、また上告人は原審に対し特別上告提起にもとづく強制執行停止の申立をしてい

ないのであるから、所論は原判決それ自体に憲法違反のあることを主張するもので

ないことに帰し、特別上告適法の理由とならない。よつて論旨は採るを得ない。

よつて、民訴四〇九条ノ三、四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一

致で、主文のとおり判決する。

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 小 谷 勝 重

裁判官 藤 田 八 郎

裁判官 河 村 大 助

裁判官 奥 野 健 一

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